万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

2018-01-01から1年間の記事一覧

541.巻六・1005・1006:八年丙子(へいし)の夏六月、吉野の離宮(とつみや)に幸しし時に、山部宿禰赤人の、詔に応へて作れる歌一首あわせて短歌

八年丙子:天平八(736)年。 六月:6月27日行幸、7月13日還御。 1005番歌 訳文 「八方を知らすわが大君が支配なさる吉野の宮は、山が高いので雲がたなびいている。川が早いので浅瀬の音が清らかに響く。神々しく、見れば貴いことだ。もっともなことに、見れ…

540.巻六・1004:鞍作村主益人の歌一首

1004番歌 訳文 「思いがけずいらしてくださったあなただったのに、佐保川の日暮に鳴く河蝦(かはづ)も聞かせずお帰ししてしまったことよ」 読み下し文 「思ほえず来ましし君を佐保川の河蝦聞かせず帰しつるかも」 河蝦:夕方の河蝦、913番歌参照。蛙・河鹿…

539.巻六・1003:筑後守外従五位下葛井連大成の、遥かに海人の釣船を見て作れる歌一首:

玉の歌です。 HPのBIVALVESの「万葉集の貝」の部屋の「玉の歌」の棚に記載しています。 また、真珠を創る貝については同じ部屋の「真珠貝」の棚を覘いて見てください。 なお、万葉集の貝の部屋へは下のリンクから。 万葉集の貝 1003番歌 訳文 「海人の少女た…

538.巻六・997~1002:春三月に、難波の宮に幸(いでま)しし時の歌六首

997番歌(しじみの歌です。集中8番目の貝を詠んだ歌:作者未詳) 右のリンクのBIVALVES(myHP)の万葉集の貝の部屋にシジミの項があります。 下の万葉集ーシジミからどうぞ訪ねてください。 で、997番歌は省略します。 万葉集ーシジミ 998番歌(船王の作)…

537.巻六・996:六年甲戌に、海犬養(あまのいぬかひ)宿禰岡麿の、詔に応へたる歌一首

六年甲戌:天平六年(734年) 996番歌 訳文 「御民である私は、生きているかいがあります。天地がこのように栄える時にあったことを思うと」 読み下し文 「御民(みたみ)われ生ける験あり天地(あめつち)の栄ゆる時にあへらく思へば」 引用した本です。 今…

536.巻六・995:大伴坂上郎女の親族(うから)と宴せる歌一首

995番歌 訳文 「このようにずっと楽しみ飲みたいものよ。変わらずみえる草木だって、春はおい茂りつつ、秋には散ってしまうことだ」 読み下し文 「かくしつつ遊び飲みこそ草木すら春はもえつつ秋は散りゆく」 引用した本です。 では、今日はこの辺で。

535.巻六・994:大伴宿禰家持の初月(みかづき)の歌一首

.家持:坂上郎女の甥。この歌、年代判明歌の中の家持の初作。時に十六歳ごろ。 994番歌 訳文 「空遠くふり仰いで三日月をみると、一目だけ見た人の引き眉が思われることよ」 読み下し文 「振仰(ふりさ)けて若月(みかづき)見れば一目見し人の眉引思ほゆる…

534.巻六・993:同じく、坂上郎女の初月(みかづき)の歌一首

初月:正しくは新月をいう。これも三日月と称した。 993番歌 訳文 「新しい月になってたった三日ほどの月のような眉を掻きつつ、日々長く慕って来たあなたにお逢いしたことよ」 読み下し文 「月立ちてただ三日月の眉根掻き日長く恋ひし君に逢へるかも」 引用…

533.巻六・992:大伴坂上郎女の、元興寺の里を詠める歌一首

元興寺:飛鳥寺の別名。奈良遷都にともなって移建。 992番歌 訳文 「古京となった飛鳥もよいけれども、青丹よき奈良の明日香を見るのもよいことよ」 読み下し文 「故郷の飛鳥はあれどあをによし平城の明日香を見らくし好しも」 引用した本です。 昨日2918年1…

532.巻六・991:同じく鹿人の、泊瀬川の辺に至りて作れる歌一首

991番歌 訳文 「岩の上を走りほとばしっては流れる泊瀬川よ。絶え間なくまた来ては見よう」 読み下し文 「石走り激るる泊瀬川絶ゆることなくまたも来て見む」 引用した本です。 今朝の積雪は20㎝ほどでした。 朝食後に雪かきをしました。 軽い冬の雪でしたが…

531.巻六・990:紀朝臣鹿人の、跡見の茂岡の松の樹の歌一首

跡見:奈良県桜井市 990番歌 訳文 「茂岡に神々しく立って繁っている、千代を待つ松の木の、歳は知りがたいことだ」 読み下し文 「茂岡に神さび立ちて栄えたる千代松の樹の歳の知らなく」 引用した本です。 今朝の積雪は数㎝でした。 朝食後、雪かきをして、…

530.巻六・989:湯原王の打酒の歌一首

打酒:酒を飲むこと。酒宴歌。 989番歌 訳文 「焼太刀の稜(かど)を鋭く打って、おおしい男子が祈りをこめるりっぱな酒に、私は酔ったことだ」 読み下し文 「焼太刀の稜打ち放ち大夫の禱(ほ)く豊御酒にわれ酔ひけり」 引用した本です。 今朝は冷え込みま…

529.巻六・988:市原王の、宴に父の安貴王を禱(ほ)ける歌一首

禱(ほ)ける:言ほぐ歌。主客への儀礼歌。 988番歌 訳文 「春の草はやがて変わっていくものです。岩のように永遠にいらしてください。貴いわが君よ」 読み下し文 「春草は後は落易(かは)らふ常盤に座せ貴き(たふと)わが君」 引用した本です。 今朝は、1…

528.巻六・987:藤原八束朝臣の月の歌一首

987番歌 訳文 「待ち遠しく私が思う月は、妻のかぶる御笠━三笠の山に、まだ隠っていることだ」 読み下し文 「待ちかてにわがする月は妹が着る三笠の山に隠(こも)りてありけり」 引用した本です。 寒さ厳しい朝でした。 今の室温が5℃。 パソコンの動きも遅…

527.巻六・985・986:湯原王の月の歌二首

985番歌 訳文 「天上においでの月読み壮士よ。贈り物をしよう。だから今夜の長さは五百夜もつづいてほしい」 読み下し文 「天に座す月読壮士幣(つくよみをとこまひ)は為む今夜の長さ五百夜継ぎこそ」 986番歌 訳文 「いとしいことよ。近くの里に住む人も訪…

526.巻六・984:豊前国(とよのみちのくちのくに)の娘子の月の歌一首

984番歌 訳文 「遠く雲隠れてどこかへいってしまったと、私が恋しく思っている月をあなたは見たいとお望みでしょうか」 読み下し文 「雲隠り行方を無みとわが恋ふる月をや君が見まく欲(ほ)りする」 引用した本です。 昨日の小樽の積雪はゼロと新聞で伝えて…

525.巻六・981~983:大伴坂上郎女の月の歌三首

981番歌 訳文 「獦(かり)高の高円山が高いから、出で来る月もなかなか照らないのだろうかなあ」 読み下し文 「獦(かり)高の高円山を高みかも出で来る月の遅く照るらむ」 982番歌 訳文 「暗い夜の霧がたって、ぼんやりと照っている月は、目をとめると、悲…

524.巻六・980:安倍朝臣虫麿の月の歌一首

980番歌 訳文 「雨に包まれる三笠の山が高いから、月が出てこないのかな。夜はどんどん更けていきながら」 読み下し文 「雨隠(あまごも)る三笠の山を高みかも月の出で来ぬ夜は降(くた)ちつつ」 引用した本です。 小樽のきょう2018年12月2日の日の出は、6…

523.巻六・979:大伴坂上郎女の、姪(をひ)家持の佐保より西の宅(いへ)に環帰(かへ)るに与へたる歌一首

979番歌 訳文 「あなたが着ている衣は薄い。だから佐保の河辺を吹く風は、ひどく吹かないでほしい。家に帰りつくまでは」 読み下し文(これまで、書き下し文、書き出し文としていたものを読み下し文に統一します。以下の本を引用します。):本文(原文)を…

522.巻六・978:山上臣憶良、沈痾の時の歌一首

沈痾:病いに沈む、意。 今回引用した本です。 「それじゃ、もうひとつ山上憶良の歌をうたってみましょう。 「士(をのこ)やも 空しかるべき 萬代(よろずよ)に 語り継ぐべき 名は立てずして」 山上憶良という人は大変苦労した人なんですよ、家柄はないけ…

521.巻六・976・977:五年葵酉に、草香山を越ゆる時に、神社忌寸老麻呂(かむそのいみきおゆまろ)が作る歌二首

五年:天平五(733) 草香山:生駒山の西の一部、東大阪市日下町付近の山地。 976番歌 訳文 「難波の海の干潟に残る潮だまりのさまをよく見ておこうよ。家にいる妻が帰りを待ち受けていてたずねた時に話してやるために」 書き下し文 「難波潟 潮干のなごり …

520.巻六・975:中納言安倍広庭卿が歌一首

975番歌 訳文 「こうして過す楽しさの故にこそ、短いはずの命だが、少しでも長かれと願うのです」 書き出し文 「かくしつつ あらくをよみぞ たまきはる 短き命を 長く欲(ほ)りする」 宴歌であろう。第一句の「かく」は宴歌をさすか。 たまきはる:命の枕詞…

519.巻六・973・974:天皇、酒を節度使の卿等に賜ふ御歌一首あわせて短歌

天皇:すめらみこと、四十五代聖武天皇。 973番歌 訳文 「わが治め給う国の遠く離れた政庁に、そなたたちがこうして出かけて行ったなら、私は心安らかに遊んでいられよう。ゆったり腕組みしておいでになれよう。天皇である私の尊い御手で、髪を撫でてねぎら…

518.巻六・971・972:四年壬申に、藤原宇合卿、西海道の節度使に遣はさゆる時に、高橋連虫麻呂が作る歌一首あわせて短歌

四年:天平四(732)年。 藤原宇合卿(ふぢはらのうまかひのまへつきみ):不比等の三男。式家の祖。 971番歌 訳文 「白雲の立つという、その龍田山の木々が冷たい霧で色づく時に、この山を越えて旅にお出かけのあなたは、幾重にも重なる山々を踏み分けて進…

517.巻六・969・970:三年辛羊に、大納言大伴卿、寧楽(なら)の家に在りて、故郷を思ふ歌二首

三年:天平三(731)年。この年秋七月二十五日、旅人は六十七歳で没した。以下病床での作。 故郷:明日香の古京。三十歳になるまで過ごした地。 969番歌 訳文 「ほんのちょっとでも出かけて行って見たいものだ。もしや神なび川の淵は浅くなってしまって、瀬…

516.巻六・967・968:大納言大伴卿が和ふる歌二首

前の965番と966番歌に和ふる歌です。 967番歌 訳文 「大和へ行く道すじの、吉備の児島を通る時には、筑紫娘子の児島のことが思い出されるであろうな」 書き出し文 「大和道の 吉備の児島を 過ぎて行かば 筑紫の児島 思ほえむかも」 「大和道」の語を承けて96…

515.巻六・965・966:冬の十二月に、大宰帥大伴卿、京に上る時に、娘子が作る歌二首

冬:天平二(730)年 大伴卿:大伴旅人 965番歌 訳文 「あなた様が並のお方であったら、別れを惜しんであれこれ思いのままに振舞いたいのですが、恐れ多いと思って、振りたい袖も振らないでじっとこらえている私なのです」 書き出し文 「おほならば かもかも…

514.巻六・963・964:冬の十一月に、大伴坂上郎女、帥の家を発ちて道に上り、

筑前(つくしのみちのくち)の国の宗像(むなかた)の郡(こほり)の名児の山を越ゆる時に作る歌一首 963番歌 訳文 「この名児山の名は、神代の昔、国造りをした大国主命と少彦名命がはじめて名付けられたのであろうが、心がなごむという、その名児山の名を…

513.巻六・962:天平二(730)年庚午に、勅して擢駿馬使大伴道足宿禰を遣はす時の歌一首

962番歌 訳文 「人里離れた奥山の岩に苔が生えて神々しいように、恐れ多くもこの私に歌をお求めになるのですね。歌らしい歌を思いつくはずもありませんのに」 書き出し文 「奥山の 岩に苔生し 畏くも 問ひたまふかも 思ひあへなくに」 葛井(ふじい)広成が…

512.巻六・957~961:冬の十一月に、大宰の官人等(たち)、香椎(かしひ)の廟(みや)を拝みまつること訖(をは)りて、

退り帰る時に、馬を香椎の浦に駐めて、おのもおのも懐(おもひ)を述べて作る歌。 957番歌:帥大伴卿が歌一首 訳文 「さあみんな、この香椎の干潟で、袖の濡れるのなどかまわずに、楽しく朝食(あさげ)の海藻を摘もう」 書き出し文 「いざ子ども 香椎の潟に…