万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

365.巻四・576:大宰帥大伴卿が京に上りし後に、筑後守葛井連大成が悲嘆しびて作る歌一首

576番歌 訳文 「これから先、大宰府通いの城の山道は寂しいことでしょう。せっかくお目にかかるのを楽しみに通いつづけようと思っていましたのに」 書き出し文 「今よりは 城の山道は 寂しけむ 我が通はむと 思ひしものを」 城の山:大宰府の西南、肥前境の…

364.巻四・572~575:大宰帥大伴卿が京に上りし後に、沙弥満誓、卿に贈る歌二首と大納言大伴卿が和ふる歌二首

満誓:旅人帰京後も観世音寺別当として大宰府にいた。 572番歌 訳文 「いくらお逢いしても飽きない君に置きざりにされて、いつまで朝に夕に寂しい気持を抱きつづけることでしょうか」 書き出し文 「まそ鏡 見飽かぬ君に 後れてや 朝夕に さびつつ居たむ」 31…

363.巻四・568~571:大宰帥大伴卿、大納言に任けらえて京に入る時に臨み、府の官人ら、郷を筑前の国蘆城の駅家(うまや)餞する歌四首

568番歌 訳文 「これから旅される船路の、岬々の荒磯に立つ五百重波(いおえなみ)のように、立っていても座っていても、いつも思いを去らぬ君です」 書き出し文 「み崎みの 荒磯に寄する 五百重波(いほへなみ) 立ちても居ても 我が思へる君」 569番歌 訳…

362.巻四・566・567:大宰大監大伴宿禰百代ら、駅使(はゆまづかひ)に贈る歌二首

駅使:駅馬の利用を許されて都から馳せ参じた官使。 566番歌 訳文 「都に向けて旅立って行く君たちが慕わしく離れがたいので、つい連れだって来てしまった。志賀の浜辺の道を」 書き出し文 「草枕 旅行く君を 愛(うるは)しみ たぐひてぞ来し 志賀の浜辺を…

361.巻四・565:賀茂女王が歌一首

565番歌 訳文 「筑紫船は大伴の御津(みつ)に泊(は)てますが、私はあなたを「見つ」とは言いますまい。あかあかと照る月の夜に、じかにお逢いできたとしても」 書き出し文 「大伴の 見つとは言はじ あかねさし 照れる月夜に 直に逢へりとも」 556番歌の「…

360.巻四・563・564:大伴坂上郎女が歌二首

前歌(559~562番歌)の一連の老人の恋に対して、老女の恋の形で答えた物。 この二首も恋の遊びと思われます。 引用した本です。 参考にした本です。 563番歌 訳文 「黒髪に白髪が混じるほど老いたこの年になるまで、こんなにも激しい恋をしたことはございま…

359.巻四・559~562:大宰大監大伴宿禰百代が恋の歌四首

大宰大監:大宰府の三等官、訴訟事務を受け持つ。 559番歌 訳文 「今まで平穏無事に生きてきたのに、年よりだてらに、私はこんな苦しい恋を経験するはめになってしまったよ」 書き出し文 「事もなく 生き来しものを 老いなみに かかる恋にも 我れは逢へるか…

358.巻四・557・558:土師宿禰水道(みみち)、筑紫より京に上る海道にして作る歌二首

557番歌 訳文 「大船をはやりにはやって漕ぎ進めているうちに、岩に触れ転覆するならしてもよい。あの子に早く逢えるなら」 書き出し文 「大船を 漕ぎの進みに 岩に触れ 覆(か)らば覆れ 妹によりては」 558番歌 訳文 「これほど海が荒れるのなら、安全を願…

357.巻四・556:賀茂女王、大伴宿禰三依に贈る歌一首 故左大臣長屋王が女(むすめ)なり

556番歌 訳文 「あなたを乗せる筑紫通いの船がまだ来もしないうちから、もうよそよそしくするあなたを見るのはほんとうに悲しい」 書き出し文 「筑紫船 いまだも来ねば あらかじめ 荒ぶる君を 見るが悲しさ」 三依はこの時に大宰府に任官したのであろう。 あ…

356.巻四・555:大宰帥大伴卿、大弐丹比県守卿(だいにたぢひのあがたもりのまへつきみ)が民部卿に遷任するに贈る歌一首

大弐:大宰府の次官 丹比県守卿:右大臣嶋の子 民部卿:民部省の長官で、正四位下相当。 555番歌 訳文 「あなたのために醸造しておいたせっかくの酒を、安の野で独り寂しく飲むことになるのか。友もいないままに」 書き出し文 「君がため 醸し待酒(まちざけ…

355.巻四・553・554:丹生女王(にふのおほきみ)、大宰帥大伴卿に贈る歌二首

大宰帥大伴卿:大伴旅人 丹生:420番歌の丹生王と同一人物か 553番歌 訳文 「あなたのいらっやる筑紫は、天雲の果ての遠方ですが、心の方がそこまで通って行くから、お顔まで見たいとしきりに恋われるのですね」 書き出し文 「天雲の そくへの極み 遠けども …

354.巻四・552:大伴宿禰三依が歌一首

552番歌 訳文 「ご主人殿はこの小僧めを死ぬとでもお思いなのでしょうか。逢って下さる夜、下さらぬ夜と、目まぐるしく二道かけて気をもませられますなあ」 書き出し文 「我が君は わけをば死ぬと 思へかも 逢ふ夜逢はぬ夜 二走るらむ」 戯れに相手の女性を…

353.巻四・549~551:五年戊辰に、大宰少弐石川足人朝臣が遷任するに、筑前の国蘆城の駅家に餞する歌参首

餞する:送別の宴 49番歌 訳文 「天地も神も加護を賜って道中の安全を助けて下さい。はるばる都まで旅するこの方が家に帰りつくまで」 書き出し文 「天地の 神も助けよ 草枕 旅行く君が 家にいたるまで」 旅の安全を祈る歌を贈るのが送別の儀礼であった。 55…

352.巻四・546~548:二年乙牛の春の三月に、三香の原の離宮(とつみや)に幸す時に、娘子を得て作る歌一首あわせて短歌 笠朝臣金村

546番歌 訳文 「三香の原で旅寝の寂しさをかこたねばならない折も折、道で行きずりに出逢って、空行く雲でも眺めるようによそ目に見るばかりで、言葉をかけるきっかけないので、いとしさにただ胸がいっぱいになっている時に、天や地の神様が仲を取りもって下…

351.巻四・543~545:神亀元年甲子の冬の十月に、紀伊の国に幸す時に、従駕(おほみとも)の人に贈らむために娘子に誂(あとら)へらえて作る歌一首あわせて短歌  笠朝臣金村

543番歌 訳文 「天皇の行幸につき従って、数多くの大宮人たちと一緒に出かけて行った、ひときわ端麗な私の夫は、軽の道から畝傍山を見ながら紀伊街道に足を踏み入れ、真上山を越えてもう山向かうの紀伊に入っただろうが、その夫は、黄葉の葉の散り乱れる風景…

350.巻四・537~542:高田女王(たかたのおほきみ)、今城王(いまきのおほきみ)に贈る歌六首

537番歌 訳文 「私の所へ来られない言いわけに、そんなにもきれいごとをおっしゃいますな。一日だってあなたをおそばに見ないと、私はとてもがまんができないのですよ」 書き出し文 「言清く いともな言ひそ 一日(ひとひ)だに 言いしなきは あへかたきかも…

349.巻四・536:門部王(かどへのおほきみ)が恋の歌一首

536番歌 訳文 「意宇(おう)の海の潮干の干潟ではないが、かた思いにあの子のことを思いつづけながらたどることになるのか。長い長い道のりを」 書き出し文 「意宇(おう)の海の 潮干の潟(かた)の 片思(かたもひ)に 思ひや行かむ 道の長手を」 左注を…

348.巻四・534・535:安貴王(あきのおほきみ)が歌一首あわせて短歌

534番歌 訳文 「わが妻が、遠くへやられてここにいないし、妻の所への道は遥かなので、逢うてだてもないままに、妻を思ってとても平静でいられないし、嘆きに胸を苦しめるばかりでどうにもできない。 空を流れる雲にでもなりたい。 高く天がける島にでもなり…

347.巻四・532・533:大伴宿奈麻呂宿禰が歌二首

532番歌 訳文 「宮仕えのために出て行くあなたがいとしくてしかたがないので、引き留めると心苦しいし、かといって行かせるのはやりきれない」 書き出し文 「うちひさす 宮に行く子を ま悲しみ 留むれば苦し 遣ればすべなし」聖武天皇の難波宮へ宮仕えに出か…

346.巻四・530・531:天皇(すめらみこと)、海上女王(うなかみのおほきみ)に賜ふ御歌一首と海上女王が和へ奉る歌一首

天皇:45代聖武天皇 海上女王:志貴皇子の娘。 530番歌 訳文 「うっかりすると元気な赤馬が越えて逃げる馬柵(ませ)を結い固めるように、私のものと標(しめ)を結って固めておいたあなたの心には、なんの疑いもない」 書き出し文 「赤駒の 越ゆる馬柵の 標…

345.巻四・522~529:京職(みさとつかさ)藤原太夫が大伴郎女に贈る歌三首と大伴郎女、和(こた)ふる歌四首、また大伴坂上郎女が歌一首

藤原太夫:藤原麻呂。不比等の第四子で京家の祖。 大伴郎女:大伴坂上郎女 522番歌(~524番歌までの三首) 訳文 「おとめの玉櫛笥に納めてある玉櫛は神さびているというが、私の方は神さびたじいさんなったことだろうね。長くあなたに逢わずにいるから」 書…

344.巻四・521:藤原宇合大夫(ふじはらのうまかひのまへつきみ)、遷任して京に上る時に、常陸娘子が贈る歌一首

常陸娘子:常陸の国の女性の意。あるいは遊行女婦か。 521番歌 訳文 「庭畑に並び立っている麻を刈って干し、織った布を日にさらす、この田舎くさい東女のことをお忘れくださいますな」 書き出し文 「庭に立つ 麻手刈り干し 布曝す 東女を 忘れたまふな」 庭…

343.巻四・519・520:大伴郎女が歌一首と後の人の追同する歌

大伴郎女:伝未詳。後に大伴旅人の妻になった女性とする説もある。 追同:時がたってから前歌に唱和する意。編者が唱和したものであろう。 519番歌 訳文 「雨を口実にしては、いつも家に籠っていて、おいで下さらないあなたは、ゆうべ来られた時に降った雨に…

342.巻四・517・518:大納言兼大将軍大伴卿の歌一首と石川郎女が歌一首

大納言兼大将軍大伴卿:大伴安麻呂。 517番歌 訳文 「罪をこうむるという神木にさえ手はふれるというものを、あなたが人妻だからとて、まだ手をふれぬことよ。心に願いながら」 書き出し文 「神樹(かむき)にも 手は触るといふを うつたへに 人妻と言へば …

341.巻四・514、515、516:安倍郎女が歌一首、中臣朝臣東人が安倍郎女に贈る歌一首と安倍郎女が答ふる歌一首

514番歌 訳文 「縫ってさし上げる、あなたのお着物の、針目にのこらず入ってしまったようです。糸ばかりか、私の心まで」 書き出し文 「我が背子が 著(け)せる衣の 針目おちず 入りにけらしも 我が心さへ」 著(け)せ:キルの敬語。見ル→メスと同じ。 次…

340.巻四・513:志貴皇子の御歌一首

513番歌 訳文 「大原のこの神聖ないつ柴のように、いつ逢えるかと願っていたあなたに今夜逢えたことよ」 書き出し文 「大原の この厳柴(いつしば)の 何時(いつ)しかと わが思う妹に 今夜(こよい)逢へるかも」 万葉仮名 「大原乃 此市柴乃 何時鹿跡 吾…

339.巻四・512:草嬢(くさのをとめ)が歌一首

草嬢:未詳、田舎娘の漢語風表現か 512番歌 訳文 「穂の垂れた秋の田の、隣り合った稲刈り場で、ついこんなに二人が近寄ってしまったら、それさえ噂の種に取り上げて、人は私のことをとやかく言いふらすでしょうか」 書き出し文 「秋の田の 穂田(ほだ)の刈…