万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

461.巻五・865:松浦(しょうほ)の仙媛の歌に和ふる一首

865番歌 訳文 「あなたをお待ちしている松浦の浦の娘子たちは、常世の国の海人の娘なのでしょうか」 書き下し文 「君を待つ 松浦の浦の 娘子らは 常世の国の 海人娘子かも」 旅人から送られた853~863番歌に和したもの。 唐招提寺の画像の続きです。 では、…

460.巻五・864:諸人の梅花の歌に和へ奉る一首

864番歌 訳文 「宴に加わることもできないでずっとお慕い申してなどおらずに、いっそのこと、あなたのお庭の梅の花にでもなった方がましです」 書き下し文 「後れ居て 長恋せずは 御園生の 梅の花にも ならましものを」 864番歌以下四首、吉田宜作。 旅人か…

459.巻五・都の宣から大宰府の大伴旅人に宛てた返書の訳文

「宣(よろし)申し上げます。 忝(かたじけな)くも四月六日付けの御書簡を拝受いたしました。 謹んで文箱を開き、芳章を拝読致しました。心が晴々して郎らかなことは、泰初が日月を懐にした気持そのままであり、卑しい思いが消えてさわやかなことは、楽広…

458. 巻五・861~863:後人の追和する詩三首 帥老(そちのおきな)

861番歌 訳文 「松浦川の川の瀬が早いので、娘子たちは紅の裳裾をあでやかに濡らしながら、鮎を釣っていることであろうか」 書き下し文 「松浦川 川の瀬早み 紅の 裳の裾濡れて 鮎か釣るらむ」 蓬客の855番歌に和した歌。 862番歌 訳文 「誰もかれもが見てい…

457.巻五・858~860:娘子らがさらに報ふる歌三首

858番歌 訳文 「若鮎を釣る松浦の川の川なみの、そのなみというような並々の気持で思うのでしたら、私はこんなに恋い焦がれることがありましょうか」 書き下し文 「若鮎釣る 松浦の川の 川なみの 並にし思はば 我れ恋ひめやも」 857番歌の「若鮎釣る」を承け…

456.巻五・855~857:蓬客のさらに贈る歌三首

蓬客:蓬のような卑しいさすらい人の意。812番歌の前文「蓬身」参照。以下三首の実作者は、854番歌までの歌を旅人から披露された某大宰府官人らしい。 855番歌 訳文 「松浦川の川瀬はきらめき、鮎を釣ろうと立っておられるあなたの裳裾が美しく濡れています…

455.巻五・853・854・ 松浦川に遊ぶ序

松浦川:佐賀県東松浦郡の玉島川 序の訳文 「私は、たまたま松浦の県をさすらい、ふと玉島の青く澄んだ川べりに遊んだところ、思いがけずも魚を釣る娘子たちに出逢った。 その花の顔は並ぶものがなく、光り輝く姿は比べるものもない。 しなやかな眉はあたか…

454.巻五・849~852:後に梅の歌に追和する四首

後に梅の歌に追和する四首:梅花の歌に追って和した意。作者は旅人らしい。 849番歌 訳文 「残雪に混じって咲いている梅の花よ、早々と散らないでおくれ。たとえ雪は消えてしまっても」 書き下し文 「残りたる 雪に交じれる 梅の花 早くな散りそ 雪は消(け…

453.巻五・ 847・848:員外、故郷を思ふ両歌

員外:梅の花三十二首の員数外の人の意。三十二首の末尾843~845などに刺戟されての旅人の作らしい。 847番歌 訳文 「私の男盛りはすっかり過ぎてしまった。飛行長生の仙薬を飲んでも、再び若返りはしまい」 書き下し文 「我が盛り いたくくたちぬ 雲に飛ぶ …

452.巻五・815~846:梅花の歌三十二首あわせて序(六の六:841~846番歌)

841番歌 訳文 「鶯の鳴く声をちょうど耳にしたその折しも、梅の花がこの我らの園に咲いては散っている」 書き下し文 「うぐいすの 音聞くなへに 梅の花 我家の園に 咲きて散るみゆ」対馬目高氏老 842番歌 訳文 「この我らの庭の梅の下枝を飛び交いながら、鶯…

451.巻五・815~846:梅花の歌三十二首あわせて序(六の五:835~840番歌)

835番歌 訳文 「春になったらぜひ逢いたいと思っていた梅の花だが、この花に今日のこの宴で、皆してめぐり逢うことができた」 書き下し文 「春さらば 逢はむと思ひし 梅の花 今日の遊びに 相見つるかも」薬師高氏義通 836番歌 訳文 「梅の花をてんでに手折り…

450.巻五・815~846:梅花の歌三十二首あわせて序(六の四:829~834番歌)

829番歌 訳文 「梅の花が咲いて散ってしまったらば、桜の花が引き続き咲くようになっているではないか」 書き下し文 「梅の花 咲きて散りなば 桜花 継ぎて咲くべく なりにてあらずや」薬師張氏福子 830番歌 訳文 「万代の後まで春の往来があろうとも、この園…

449.巻五・823~834:梅花の歌三十二首あわせて序(六の三:823~828番歌)

823番歌 訳文 「梅の花が散るというのはどこなのでしょう。そうは申しますものの、この城の山にはまだ雪が降っている。その散る花はあの雪なのですね」 書き下し文 「梅の花 散らくはいづく しかすがに この城の山に 雪は降りつつ」大監伴氏百代 824番歌 訳…

448.巻五・815~846:梅花の歌三十二首あわせて序(六の二:817~822番歌)

817番歌 訳文 「梅の花の咲き匂うこの園の青柳は美しく芽ぶいて、これも蘰(かずら)にできるほどになったではないか」 書き下し文 「梅の花 咲きたる園の 青柳は かづらにすべく なりにけらずや」少弐粟田大夫 818番歌 訳文 「春が来るとまっ先に咲く庭前の…

447.巻五・815~846:梅花の歌三十二首あわせて序(六の一:序と二首)

序の前に、285の392番歌番に記載した「万葉時代の梅」を読んでみてください。 souenn32.hatenablog.jp では、序の訳文 「天平二年正月十三日、帥の老の邸宅に集まって、宴会をくりひろげた。 折しも、初春の佳き月で、気は清く澄みわたり風はやわらかにそよ…

446.巻五・813・814:十一月八日 還使の大監(だいげん)に附く 謹通 尊門 記室

大監(だいげん):大宰府の訴訟事務を掌る官。大伴宿禰百代らしい。 尊門:他人への尊称。 記室:書記。相手を直接ささず、その書記に宛てた形で相手を敬う。「侍史」の類。 訳 「筑前の国怡土群(いとぐん)深江村子負の原の、海を目の前にした丘の上に二…

445.巻五・812:天平元年十月七日 使に附けて進上(たてまつ)る 謹通 中衛高明閣下 謹空

天平元年十月七日:729年。旅人、正三位六十五歳・ 謹通:謹んで書状を差し上げる。 中衛高明閣下(ちょうゑいかうめいかふか):房前。不比等の第二子。北家の祖。時に参議、正三位四十九歳。高明は人の徳をほめる尊称。 謹空:書簡の末尾につける慣用句。 …

444.巻五・810・811:大伴淡等謹状(たびときんじょう)

大伴淡等謹状:大伴旅人謹んで申す。藤原房前への書状。「淡等」はタビトを漢字音で書いたもので、中国風の表記。 訳文 「この琴が、娘子となって夢に現れれて言いました。 「私は、遠い対馬の高山に根を下ろし、果てもない大空の美しい光に幹をさらしていま…

443.巻五・806~809:歌詞両首 大宰帥大伴卿と答ふる歌二首

訳文 「伏して御芳書を添うし、しかと御意のほど承りました。 つけても天の川を隔てた牽牛・織姫の恋にも似た嘆きを覚え、また恋人を待ちあぐねて死んだ尾生と同じ思いに悩まされています。 ただただ乞い願うことは、離れ離れでありましても互いに障りなく、…

442.巻五・804・序・805:世間の住みかたきことを哀しぶる歌一首あわせて序 反歌

世間の住みかたきことを哀しぶる歌:俗世の住みにくさを悲しむ歌 序から集中では記載されています。 「集まりやすく排(はら)ひかたきものは八大の辛苦なり、遂げかたく尽くしやすきものは百年の賞楽なり。古人の嘆くところ、今にも及ぶ。 このゆゑに、一章…