万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

264.巻三・355:生石(おひしの)村主真人が歌一首

生石:大石とも書く。 355番歌 訳文 「大国主命と少彦名命が住んでいらしたという志都(しつ)の岩屋は、幾代を経たことだろうか」 書き出し文 「大汝(おほなむぢ) 少彦名(すくなびこな)の いましけむ 志都の岩屋は 幾代経ぬらむ」 志都の岩屋:島根県太…

264.巻三・354:日置少老(へきのをおゆ)が歌一首

354番歌 訳文 「縄の浦の塩焼き煙、夕方になると、行き過ぎることもできずに、山にたなびく」 書き出し文 「縄の浦に 塩焼く火の気 夕されば 行き過ぎかねて 山にたなびく」 「・・・兵庫県で「万葉集」に登場する地域は、西海道(九州)へのメインルート・…

262.巻三・353:釈通観が歌一首

釈通観:伝未詳、釈は仏門にある者を表す。 353番歌 訳文 「吉野の高城(たかき)の山を見ると、そこに白雲が、進むのをためらうかのようにずっとたなびいている」 書き出し文 「み吉野の 高城の山に 白雲は 行きはばかりて たなびけりみゆ」 白雲のかかる山…

261.巻三・352:若湯座王(わかゆゑのおほきみ)が歌一首

352番歌 訳文 「今頃は葦辺に鶴が鳴いて港風が冷たく吹いていることであろう。あの津乎の崎よ」 書き出し文 「葦辺には 鶴がね鳴きて 港風 寒く吹くらむ 津乎の崎はも」 回想の歌。 港・葦・鶴は取り合わせとして固定していた。 引用した本です。 昨日は急用…

260.巻三・351:沙弥満誓(さみまんざい)が歌一首

351番歌 訳文 「世の中を何に譬えたらよいだろう。それは、朝早く漕いで出て行った船が、跡に何も残さないようにはかないものだ」 書き出し文 「世の中を 何に譬へむ 朝開き 漕ぎ去にし船の 跡なきがごと」 自問自答の形で、この世の常なきさまを詠んだ歌。…

259.巻三・338~350の内の347~350:太宰帥大伴卿、酒を讃むる歌十三首の四首

347番歌 訳文 「この世の中の色々の遊びの中で一番楽しいことは、一も二もなく酔い泣きすることのようだ」 書き出し文 「世間の 遊びの道に 楽しきは 酔い泣きするに あるべかるらし」 前歌の「心遣る」を承けて「世間の遊び」と続けたもの。 「酔い泣き」を…

258.巻三・338~350の内の341~346:太宰帥大伴卿、酒を讃むる歌十三首の六首

341番歌 訳文 「分別ありげに小賢しい口をきくよりは、酒を飲んで酔い泣きしている方がずっとましだろう」 書き出し文 「賢しみと 物言ふよりは 酔ひ泣きするし まさりたるらし」 「賢しら」と「酔ひ泣き」とを対比し、後者を賞揚した歌。 前歌の「賢しき」…

257.巻三・338~350の内の338~340:太宰帥大伴卿、酒を讃むる歌十三首

338番歌以下十三首は、338、341、344、347、350が柱となり、その間にある二首ずつが一組となっているようです。 338番歌 訳文 「くよくよしてもはじまらない物思いなどにふけるよりは、そのこと濁り酒の一杯でも飲む方がよさそうだ」 書き出し文 「験(しる…

256.巻三・337:山上憶良臣(おみ)、宴を罷る歌一首

罷る:貴人(ここは旅人)のもとから退出する意 337番歌 訳文 「憶良めは今はお暇致しましょう。子が泣いているでしょう。きっとその子の母も私を待っているでしょうよ」 書き出し文 「憶良らは 今は罷らむ 子泣くらむ それその母も 吾を待つらむそ」 引用し…

255.巻三・336:沙弥満誓(さみまんぜい)、綿を詠む歌一首

沙弥:僧侶として最小限の資格である十戒を受けたばかりで、それ以上の段階にすすんでいない男性。大伴旅人と交友があった。 336番歌 訳文 「筑紫産の真綿は、まだ肌身につけて着てみたことはないが、いかにも暖かそうだ」 書き出し文 「しらぬひ 筑紫の綿は…

254.巻三・331~335:帥大伴卿が歌五首

帥大伴卿:太宰府の長官、大伴旅人。 331番歌は、328番歌~330番歌へと続いてきた「奈良の都」、特に、330番歌それを承けている。 331番歌 訳文 「私の若い盛んだった頃は、また戻って来ることがあろうか。もしかして、もう奈良の都を見ずに終わるのではなか…

253.巻三・329・330:防人司佑大伴四綱が歌二首

329番歌は、328番歌の「奈良の都」を承けて続けた歌。 329番歌 訳文 「(やすみしし)わが大君が治められる国々のうちでは何よりも都のことが思われますね。」 書き出し文 「やすみしし 我が大君の 敷きませる 国の中には 都し思ほゆ」 330番歌は、329番歌に…

252.巻三・328:太宰少弐小野老朝臣(だざいのせうにをののおゆのあそみ)が歌一首

328番歌 訳文 「(おをによし)奈良の都は、咲く花が爛漫と咲き誇るように、今真っ盛りでした」 書き出し文 「あをによし 奈良の都は 咲く花の 薫(にほ)ふがごとく 今盛りなり」 「平城京というと、まず想起されるのはこの歌である。 「にほふ」は香りにい…

251.巻三・327:或る娘子ら、裏(つつ)める乾し鰒を贈りて、戯(たはぶ)れて通観僧の呪願(しゅぐわん)を請ふ時に、通観が作る歌一首

通観:伝未詳、353番歌にも歌があります。 327番歌 訳文 「たとえ海の神います沖へ持って行って放したとしても、どうしてこんなものが二度と生き返りましょうや」 娘たちのからかいに対して、海のものであるあわびを生き返らすことは、海神の力でもだめなの…

250.巻三・326:門部王(かどへのおほきみ)、難波に在りて、海人の燭光(ともしび)を見て作る歌一首

後に姓大原真人の氏を賜はる 326番歌 訳文 「遠く見わたすと明石の浦に漁り火が光って見えるが、その漁り火がちらつくように人目につくようになってしまった。妹への恋心が」 書き出し文 「見わたせば 明石の浦に 燭す火の 穂にぞ出でぬる 妹に恋ふらく」 引…

249.巻三・324・325:神岳に登りて、山部宿禰赤人が作る歌一首あわせて短歌

324番歌 訳文 「神岡にたくさんの枝をさしのべて生い茂っている栂(つが)の木、その名のようにつぎつぎと、玉葛のように絶えることなく、ずっとこうしていつもいつも訪ねてみたく思う明日香の古い都は、山が高く川が雄大である。 春の日は山の眺めがよく、…

248.巻三・322・323:山部宿禰赤人、伊予の温泉に至りて作る歌一首あわせて短歌

322番歌 訳文 「天皇である神が領知なさっている国々に温泉はたくさんあるけれども、島や山の素晴らしい国だと峻厳な伊予の高嶺である射狭庭(いざにわ)の岡にお立ちになられて、歌を思い、ことばを練られた、そんな温泉の近くの木立を見ると臣の木はそのま…

247.巻三・319・320・321:富士の山を詠む歌一首あわせて短歌

319番歌 訳文 「甲斐の国と駿河の国と二つの国の真中から聳え立っている富士の高嶺は、空の雲も行き滞り、飛ぶ鳥も飛び通うこともなく、燃える火を雪で消し、降る雪を火で消し続けて、言いようもなく名付けようも知らぬほどに、霊妙にまします神である。 せ…

246.巻三・317・318:山部宿禰赤人、富士の山を望む歌一首あわせて短歌

317番歌 訳文 「天地が別れた時から、神々しくて高い貴い、駿河にある富士の高嶺を、大空はるかに振り仰いで見ると、空を渡る太陽の姿も隠れ、照る月の光も見えず、白雲も行きかね、時となく常に雪は降っている。語り継ぎ言い継いで行こう、この富士の高嶺は…

245.巻三・315・316:暮春の月に、吉野の離宮に幸す時に、中納言大伴卿、勅を奉りて作る歌一首あわせて短歌

聖武天皇の神亀天平時代の歌人、大伴旅人、家持のお父さんですね。 315番歌 訳文 「み吉野、この吉野の宮は山そのものがよくて貴いのである、川そのものがよくて清らかなのである。天地とともに長く久しく万代に改らずあることであろう、わが大君の行幸の宮…

244.巻三・314:波多朝臣小足(はたのあそみをたり)が歌一首

314番歌 訳文 「越の国へ行く道の能登瀬川、この川の音のなんとさやかなことよ。流れの激しい川瀬ごとに」 書き出し文 「さざれ波 磯越道(いそこしぢ)なる 能登瀬川 音のさやけさ たぎつ瀬ごとに」 引用した本と参考にした本です。 下の本は説明が詳しく、…