444.巻五・810・811:大伴淡等謹状(たびときんじょう)
大伴淡等謹状:大伴旅人謹んで申す。藤原房前への書状。「淡等」はタビトを漢字音で書いたもので、中国風の表記。
訳文
「この琴が、娘子となって夢に現れれて言いました。
「私は、遠い対馬の高山に根を下ろし、果てもない大空の美しい光に幹をさらしていました。
長らく雲や霞に包まれて山川の蔭に遊び暮らし、遥かに風や波を眺めて物の約に立てるかどうかの状態でいました。
たった一つの心配は、寿命を終えて空しく谷底深く朽ち果てることでしょう。
ところが、幸いにも立派な工匠(たくみ)に出逢い、細工されて小さな琴となりました。
音質は荒く音量も乏しいことを願みず、徳の高いお方のお側に置かれることをずっと願うております」と」
すなわち、歌ひて日はく、
「そこで娘子が歌った歌」
810番歌
訳文
「どういう日のどんな時になったら、この声を聞きわけて下さる立派なお方の膝の上を、私は枕にすることができるのでしょうか」
書き下し文
「いかにあらむ 日の時にかも 声知らむ 人の膝の上 我が枕かむ」
僕(われ)、詩詠(しえい)に報へて日はく、
「私がその歌詠に答えた歌」
811番歌
訳文
「物言わぬ木ではあっても、立派なお方がいつも膝に置く琴に、きっとなることができましょう」
書き下し文
「言とはぬ 木にはありとも うるはしき 君が手馴れの 継ぎて見えこそ」
長谷寺の画像を貼り付けます。
では、今日はこの辺で。