443.巻五・806~809:歌詞両首 大宰帥大伴卿と答ふる歌二首
訳文
「伏して御芳書を添うし、しかと御意のほど承りました。
つけても天の川を隔てた牽牛・織姫の恋にも似た嘆きを覚え、また恋人を待ちあぐねて死んだ尾生と同じ思いに悩まされています。
ただただ乞い願うことは、離れ離れでありましても互いに障りなく、お目にかかれる日が一日も早いことだけです」(書き出し文は省略します)
806番歌
訳文
「龍の馬でも今すぐ手に入れたい。奈良の都にすっ飛ばしてあなたに逢って来るために」
書き下し文
「龍(たつ)の馬(ま)も 今も得てしか あをによし 奈良の都に 行きて来むため」
龍の馬:丈八尺の駿馬。龍馬(りゆうば)の翻読語。
807番歌訳文
「現実にはお逢いするてだてもありません。せめて夜の夢に絶えず見えて下さい」
書き下し文
「うつつには 逢ふよしもなし ぬばたまの 夜(よる)の夢にを 継ぎて見えこそ」
答ふる歌二首
808番歌
訳文
「その龍の馬を私はきっと探し出しましょう。奈良の都に飛んで来たいとおっしゃる方のために」
書き下し文
「龍の馬を 我れは求めむ あをによし 奈良の都に 来む人のたに」
809番歌
訳文
「じかにお逢いできない日がたくさん重なってしまって・・・。仰せのように、おやすみになる枕辺を離れず、夜ごとの夢にお逢いいたしましょう」
書き下し文
「直に逢はず あらくも多く 敷栲の 枕去らずて 夢にし見えむ」
807番歌に対する歌。返歌二首にはたしかに女の呼吸がある。ただし、この贈答には恋に遊ぶ気持ちが強い。
長谷寺のつづきの画像を貼り付けます。
では、今日はこの辺で。