158.巻二・117、118:舎人皇子の御歌一首と舎人娘子、和へ奉る歌一首
117番歌
訳文
「りっぱな男子たるものが片恋などしようかと思い、我が身を嘆くのだが、やはりふがいない男子は恋に苦しんでしまうのでしょうね」
書き出し文
「大丈夫(ますらお)や 片恋ひせむと 嘆けども 醜(しこ)の大丈夫なほ 恋ひにけり」
次作と贈答。
皇子は舎人氏に傅(ふ)育された。
娘子は舎人氏の娘。
片恋しないことを嘆くのではない。片恋している現在の身を嘆き、否定しようとしているのだけれども。
醜:みにくい
118番歌
訳文
「思わず嘆きながら「ますらを」たるものが恋してくださるからこそ、私の髪の結い糸も濡れて解けるのですね」
書き出し文
「嘆きつつ 大丈夫の 恋ふれこそ わが髪結(かみゆひ)の 漬(ひ)ぢてぬれけれ」
嘆きつつなお恋う所に恋の強さを感じる。
髪を結う糸が濡れ、髪がほどける。「結う髪の」訓によると、髪が濡れてほどけることになるが、結んであれば髪が濡れただけで髪はほどけない。
漬ぢて:濡れて
ぬれけれ:とける→とけるは123番歌参照(後日記載予定)
寝るときは髪をといたから、髪がとけると恋されているという俗言があったと思われる。
舎人皇子は、天武天皇の皇子。母は天智の娘新田部皇女。「日本書紀」編集の総裁。天平七(735)年没。歳60.
中西 進氏の本を引用しました。
今朝は、雨で23℃。これから一雨ごとに涼しくなるかな。いよいよ小樽の短い秋です。
では、この辺で。