231.巻三・296・297:田口益人大夫、上野の国司に任(ま)けらゆる時に、駿河の清美の崎に至りて作る歌二首
田口益人大夫:たのくちのますひとのまへつきみ、和銅元(708)年従五位上で上野(かみつけ)守になる。
駿河の清美の崎:静岡県清水区興津清見寺町にある崎、かって、廬原に属していた。
三保の浦:清水港の辺りの湾入部の海岸で、三保の松原を望む海面である。
296番歌:田口益人が清見の崎で詠んだ歌。
訳文
「廬原の清見の崎の三保の浦の広々とした海を見ながら、ゆったりと何の物思いもない」
書き出し文
「廬原の 清見の崎の 三保の浦の 豊けき見つつ 物思ひもなし」
広大な海の景色に、遠い地方への赴任に纏わる種々の愁いやわだかまりがすっかり取れたことを詠んだ歌。
引用した本です。
297番歌
訳文
「昼間よく見ても飽きない田子の浦を、官命のままに旅するとて夜通ることになってしまった」
書き出し文
「昼見れど 飽かぬ田子の浦 大君の 命畏(みことかしこ)み 夜見つるかも」
上野の国への赴任を、限られた日程(延喜式によれば十四日)内にこなそうとして、景勝の地田子の浦を昼間見て通れない感慨を詠んだもの。
引用した本は、上の新潮日本古典集成です。
11月13日、14日と札幌へ。
長野氏の本を読み終え、これで氏の本は三冊目です。
もう時期に、下の本を読み終えます。
万葉集の歌が多く出てきます。
では、この辺で。