77.万葉集に詠まれている花(18)馬酔木:あせび・あしび
裏山の木々が葉を散らし、すっかり明るくなった、さびしくなった山道で、ふと集中に「木」のある歌は何首詠まれているのだろうと思ったのです。
白樺:2013年11月7日小樽の裏山で
初心者はどうやら関心事のはじめに集中何首と思うようです。
(そんなことないよ、あんただけだよ)
で、山口大学教育学部の吉村 誠先生の万葉集検索を利用させていただき、どうやら木、樹とっして222首詠まれているようです。
もう少し増えるかもしれませんが。
とりあえず222首を対象として、整理してみました。
木・樹:213首、木の暗:12首、木の葉:17首、
草木:3首、木群:1首、瓜木:1首、木立:9首、
木末(ぬれ):18首、埋木:2首、黒木:4首、
植木:3首、木綿:28首、若木:2首、石木:2首、
白木:4首、真木:22首、百木:2首、神木:1首、
名木:1首、久木:4首、木幡:2首、野木:1首、
木枕:3首、木屑:2首、梅の木:1首、杉の木:1首、
馬酔木:10首、松の木:8首、網代木:1首、桃の木:1首、
合歓木:3首、梨の木:2首、新木:1首、舟木:2首
などでしょうか。
え、ダブっているのもあるのですが、とりあえず以上のように整理しました。
(いろは順とか詠まれている数順だとか何か系統だって、整理したら)
ま、奈良大和路で好きな花の筆頭は、馬酔木の花です。
万葉集を代表する花と勝手に決めています。
(多すぎたのでしょう、で、好きな花にしたのでしょう)
歌番の166、1128、1428、1868、1903、1926、3222、4511、4512、4513の10首です。
ここでは、馬酔木を詠んだ歌を5首記載します。
なお、馬酔木の花は、奈良大和路で初めて撮りました。
撮った場所は秋篠寺です。
その他に春日大社神苑、新薬師寺、白毫寺近く、飛鳥寺、岡寺近く、伊勢神宮などでも撮っていますので、ここに何枚か貼り付けます。
北海道には本来自生していないのですが、北大植物園と百合が原公園に生育しています。
撮ってはいるのすが、画像を貼っていません。
巻2・166
「磯の上に生ふる馬酔木を手折らめど見すべき君がありと言はなくに」
(岸のほとりに咲く馬酔木を手折って、思わず花を見せたいと思う。けれども、見せるべきあなたはいないことだのに)
巻7・1128
「馬酔木なす栄えし君が堀し井の石井の水は飲めど飽かぬかも」
(馬酔木の花のように栄えたあなたが掘った、この石井の水はいくら飲んでも飽きないことよ)
巻8・1428
「おしてる難波を過ぎてうち靡く草香の山を夕暮れに我が越え来れば山も狭に咲ける馬酔木の悪しからぬ君をいつしか行き早見む」
(一面に日が輝く難波を通りすぎて、平らに靡く草香山を、夕暮れに越えて来ると、山道も狭いほどに咲く馬酔木、その如くやさしい君に、何時お会いできるか、道を急いで早くお会いしたいものだ)
巻8・1868
「かはづ鳴く吉野の川の滝の上の馬酔木の花ぞはしに置くなゆめ」
(かじかの鳴く吉野川の激流のほとりに咲いた馬酔木の花ですよ。粗末にしないでください。けっして。)
巻10・1903
原文「吾瀬子尓 吾戀良久者 奥山之 馬酔花之 今盛有」
「我が背子に我が恋ふらくは奥山の馬酔木の花の今盛りなり」
(あの方に私の恋う思いは、奥山の馬酔木の花が、人知れず今こんなに盛りであるようだ)
なお、「桜:45首、桜木:なし、桜花:23首、梅:118首、梅木:1首、梅花:なし」と検索されましたが、椿などような一字の木は 検索していなく、検討の対象外としました。