万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

98.万葉植物と呪性

昨(2014)年12月に日本全国万葉の旅大和編を購入し、牧野貞之氏のすばらしい写真とともに楽しく万葉集を学んでいました。

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で、そのなかの万葉コラム「万葉植物と呪性」(164頁)に、呪的植物の記載がありました。

1)「呪(のろ)う」:相手に災いがあるように祈るとか「人を呪わば穴二つ」のように、あまりいい意味に思っていませんでした。

2)「呪(まじ)う」:災いをのがれるように、また、他人に災いをくだすように神仏などに祈ることのようです。

3)「呪(じゅ)」:もと、仏教語の陀羅尼(ダニラ)の訳。悪事を払い、病気を治すために、口で唱える秘密の文句。仏教では、不思議な力をもつ秘密のことば。真言。呪文・呪術。

数少ない蔵書をひもとき、上記のように整理しました。

で、呪性や呪的は、3)に近い意味で使われているのではと今理解しています。

呪的植物

その代表は椿で、神聖な呪的植物と考えられていたようです。

椿は以下の九首が詠まれています。

54、56、73、1262、3222、4152、4177、4418、4481(巻を省略)

同様に、馬酔木も呪的植物であったようです。

166、1128、1428、1868、1903、1926、3222、4511、4512、4513(巻を省略)

日本全国万葉の旅大和編を少し長く引用。

「三諸は 人の守る山 本辺には あしび花咲き 末辺には 椿花咲く うらぐはし山そ 泣く子守る山」(巻13・3222)

(三諸山は人が守っている山。麓のあたりには馬酔木の花が咲き、上の辺りでは椿の花が咲いている。美しい山だよ。泣く子が守る山だ)

・・・・・・・・・・・中略・・・・・・・・・・

そして、古代においては、呪的植物のもつ呪力を自分の身体に取り込み、己の生命力を活性化すること(タマフリ)を行った。

それは、その植物に直接触れる感染呪術として行われたほか、目のもつ力によって「見る」ことによっても行われた。

「目」は「目蓋」ということばに知られるようにメともマともいう。

その「目」を動詞にしたのが、ミル(見る)だが、モル「守る」も「目」動詞にした、大切に注視する意のことばである。人の守る山であり、泣く子の守る山である三輪山は、大物主神の祭られた神聖な山として見るべき山であった。額田王が近江遷都の際に「三輪山を 然も隠すか 雲だにも 心あらなも 隠さふべしや」(巻1・18)と三輪山を見ることを切望したのも、三輪山が見るべき山として重要であったからである。

植物の呪力を直接身体に取り込む方法に「かざし」や「かづら」があったという。

「かざし」にする植物(漠然と「花」「春の花」等とする例は除く)として歌われたのは、「黄葉」が最も多く十二例、「梅」が十例、「萩」が七例と多く、あとは「柳」が三例、「桜」「なでしこ」「藤」が各二例、「梨」「山吹」「檜」「寄生木(ほよ)」各一例となっている。

・・・・・・・・・・中略・・・・・・・・

「かづら」(素材が未詳の「はね縵」を除く)は、どんなものか不明である。「はね縵」四例を除くと、「青柳」五例、「あやめ草」三例、「稲」二例、「桜」「山縵(やまかづら)「玉縵(たまかづら)」各一例となっている。かづらとして輪にするには、弾力性のある柳や蔓性植物が相応しく、柳が五例であるのは当然といえよう。

馬酔木は、「かざし」や「かづら」に用いたことが歌われていないようで、下記の歌のように直接袖に入れたと詠まれている。

「池水に 影さへ見えて 咲きにほふ あしびの花を 袖に扱きいれな」(巻20・4512)

(池の水に影まで美しく映って咲いている馬酔木の花を、袖にしごき入れよう)

万葉の植物は、食用・薬用など実用性の高いものが歌に歌われているのが、また、その植物のもつ呪性にも注目される。

「巨勢山の つらつら椿 つらつらに 見つつ偲はな 巨勢の春野を」(坂門人足:巻1・54)

(巨勢山のつらつら椿を つらつらと見ながら偲ぼう。巨勢の春の野の光景を)

今後、万葉植物を呪性の観点からも見ていこうと考えています。

昨日、久しぶりに雪かきのしなくてもいい朝を迎えました。

で、思い切って札幌市の百合が原公園緑のセンターの温室で開催されている「雪割草展」を鑑賞することにしました。

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椿、馬酔木なども咲いていると思ったからです。

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道内には自生していないので、なおさらこの花に惹かれます。

椿

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節分草:集中には詠まれていないのですが、雪割草と同じ科。

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馬酔木も温室の片隅で咲いていました。勝手に万葉集を代表する花と決めています。2008年2月下旬に秋篠寺で見たのが最初でした。

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久しぶりに温室とはいえ咲く花を撮りました。もう一度奈良を訪ねたいなと強く思いながら、馬酔木も何か神聖な花のように感じられました。む、馬酔木の呪力かな。

万葉集は楽しいですね。

今朝も雪搔きの無い朝を迎えました。

で、久しぶりにブログを更新しました。

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