450.巻五・815~846:梅花の歌三十二首あわせて序(六の四:829~834番歌)
829番歌
訳文
「梅の花が咲いて散ってしまったらば、桜の花が引き続き咲くようになっているではないか」
書き下し文
「梅の花 咲きて散りなば 桜花 継ぎて咲くべく なりにてあらずや」薬師張氏福子
830番歌
訳文
「万代の後まで春の往来があろうとも、この園の梅の花は絶えることなく咲き続けるであろう」
書き下し文
「万代に 年は来経とも 梅の花 絶ゆることなく 咲きわたるべし」筑前介佐氏子首
831番歌
訳文
「春なればこそこんなに美しく咲いた梅の花よ。あなたを賞で思うあまりに夜も寝られない」
書き下し文
「春なれば うべも咲きたる 梅の花 君を思ふと 夜寐も 寝なくに」壱岐守板氏安麻呂
832番歌
訳文
「梅の花を手折って插頭(かざし)にしている人々は、誰もかれも今日一日は楽しみが尽きないはず」
書き下し文
「梅の花 折りてかざせる 諸人は 今日の間は 楽しくあるべし」神司荒氏稲布
833番歌
訳文
「年々春が巡って来たならば、このように梅をかざして思いきり楽しく飲もうではないか」
書き下し文
「年のはに 春の来たらば かくしこそ 梅をかざして 楽しく飲もう」大令史野氏宿奈麻呂
834番歌
訳文
「梅の花は今がまっ盛りだ。にぎやかな鳥のさえずりに心おどる春がやってきたらしい」
書き下し文
「梅の花 今盛りなり 百鳥の 声の恋しき 春来るらし」少令史田氏肥人
では、今日はこの辺で。