249.巻三・324・325:神岳に登りて、山部宿禰赤人が作る歌一首あわせて短歌
324番歌
訳文
「神岡にたくさんの枝をさしのべて生い茂っている栂(つが)の木、その名のようにつぎつぎと、玉葛のように絶えることなく、ずっとこうしていつもいつも訪ねてみたく思う明日香の古い都は、山が高く川が雄大である。
春の日は山の眺めがよく、秋の夜は川の音が澄きっている。
朝雲に鶴が飛び交い、夕霧に河鹿が盛んに鳴いている。
ああ、見るたびごとみむせび泣くばかりだ。
栄えた昔のことを思うと」
書き出し文
「みもろの 神なび山に 五百枝(いほえ)さし 繁(しじ)に生ひたる 栂の木の いや継ぎ継ぎに 玉葛 絶ゆることなく ありつつも やまず通はむ 明日香の 古き都は 山高み 川とほしろし 春の日は 山し見が欲し 秋の夜は 川しさやけし 朝雲に 鶴は乱れ 夕霧に かはづは騒ぐ 見るごとに 音のみし泣かゆ いにしへ思へば」
みもろ:神の来臨する祭壇。
神なび山:三輪・龍田・明日香などにあった。
325番歌(犬養氏の本を引用)
訳文
「明日香川の淀みに一面立ち込めている霧がなかなか消えないように、われらの慕情はけっしてすぐ消え失せるようなものではない」
書き出し文
「明日香川 川淀さらず 立つ霧の 思ひ過ぐべき 恋にあらなくに」
恋:明日香の古都に寄せる恋です。
「古都に思慕する恋は、そんな消えてなくなるような恋じゃないんです」と。
「・・・長歌では、春もいいな、秋もいいな、鶴も飛ぶし、川霧も立つしと明日香をほめて、その反歌なんですね。
それで今度は、その霧のこと。
これもきれいな歌でしょう。
・・・明日香川は上流のほうへ行くと、大変きれいです。
神岡といいますと、雷丘の付近ですね。
そこでもって詠んだ歌。
山部赤人が古都への激しい慕情をあらわした歌。
その慕情を思いながら、そしてしかも川霧の立ち去らずあるところの明日香川の景観を思いながら、山部赤人の歌心を甦えらせてみましょう」と犬養氏は文を終えています。
「明日香川 川淀さらず 立つ霧の 思ひ過ぐべき 恋にあらなくに」
引用した本です。
今朝は7㎝ほどの積雪で、しかも軽い雪。
朝食前に雪かきを終えました。
今日の天気予報では、小樽の最高気温が氷点下3℃とのこと、降る雪も真冬の雪で軽く、いよいよ真冬到来です。
では、このへんで。