301.巻三・415:上宮聖徳皇子(かみつみやしやうとこのみこ)、竹原井(たけはらのゐ)に出遊(い)でましし時に、竜田山の死人を見悲傷して作らす歌一首
挽歌
415番歌
訳文
「家にいたなら、妻の手を枕にするだろうに、(草枕)旅先で臥せっているこの旅人は、ああ哀れなことよ」
書き出し文
「家ならば 妹が手まかむ 草枕 旅に臥(こ)やせる この旅人あはれ」
題詞に見える竹原井は、柏原氏高井田の地(青谷遺跡)で奈良時代には頓宮があった。
この歌は、行き倒れの死人を鎮魂する「行路死人歌」の典型である。
聖徳太子の行路死人説話は飢人伝説ともいわれ、「日本書紀」(推古紀二十一年十二月条)に赴いた折、道のほとりに飢えた者がいたので、飲食を与え、自分の衣服を脱いで掛けてやり、「しなてる 片岡山に 飯(いひ)に飢(ゑ)て 臥(こや)せる その田人(たひと)あわれ」と歌ったという。書紀の「多比等(たひと)」(田人)が萬葉で「旅人」になっているところには、平城京遷都による旅の変化が関係している。
集中、時代の示された最古の挽歌。ただしこれは、伝誦された太子の作(推古紀二十一年)から奈良時代に新しく派生したものらしい。巻二ではなく、拾遺としての巻三挽歌の冒頭に据えられた所以か。
家と旅との対比は旅中悲歌の型。
臥(こ)やせる:「臥やす」は「臥ゆ」の敬語。死者への敬意を示す。
参考にした本
最近読んだ本
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今朝は積雪8㎝ほどで、朝食後に雪かきでした。
では、今日はこの辺で。