万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

181.巻二・159:天皇の崩(かむあが)りましし時に、大后の作らす歌一首

天皇天武天皇、686年9月9日崩御。大后:持統天皇

159番歌

訳文

「わが大君は、夕方になるときっとご覧になっている。明方(あけがた)になるときっとお尋ねになっている。その神岡の山の黄葉場を、今日もお尋ねになることであろうか。明日もご覧になることであろうか。その山をはるかに見やりながら、夕方になるとむしょうに心悲しく思い、明方になるとただこころ寂しく時をすごして、粗い喪服の袖は乾く時もない」

書き出し文

「やすみしし 我が大君し 夕されば 見(め)したまふらし 明け来れば 問ひたまはまし 神岳(かみをか)の 山の黄葉(もみち)を 今日(けふ)もかも 問ひたまはまし 明日もかも 見したまはもし その山を 振り放(さ)け見つつ 夕されば あやに悲しみ 明け来れば うらさび暮らし 荒栲(あらたへ)の 衣の袖は 干(ふ)る時もなし

殯宮(あらきみや)の期間中の歌であろう。天武天皇の殯宮は二年三か月続けられた。

我が大君し:「し」強意の助詞。ここは「らし」と対応している。

夕されば:以下四句は亡き天皇がいつも「見(め)し」「問ふ」ものと見た表現。

神岳:橘寺の南東にあるミハ山か。

2010年3月撮影の橘寺

f:id:sikihuukei:20170920044803j:plain

振り放け見つつ:空を振り仰いで魂(たま)呼ばいする儀礼を反映した表現か。

荒栲:藤や葛で織った粗い衣服。

下の本を引用しました。

f:id:sikihuukei:20170828050211j:plain

昨日と違い今朝は穏やかです。

昨日は一日降ったり、止んだり、雷鳴など台風18号が戻ってきた、いや台風時より強い雨風でした。

今朝は窓を開けると、心なしか弱くなった虫の声が聞こえます。

では、この辺で。