万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

518.巻六・971・972:四年壬申に、藤原宇合卿、西海道の節度使に遣はさゆる時に、高橋連虫麻呂が作る歌一首あわせて短歌

四年:天平四(732)年。

藤原宇合卿(ふぢはらのうまかひのまへつきみ):不比等の三男。式家の祖。

971番歌

訳文

「白雲の立つという、その龍田山の木々が冷たい霧で色づく時に、この山を越えて旅にお出かけのあなたは、幾重にも重なる山々を踏み分けて進み、敵の動きを見張っている筑紫に至り着き、山の果て、野の果てまでもくまなく検分せよと、部下を方々に遣わし、山彦の答える遠い山の果てまで、ひきがえるのはいまわる谷の隅々まで、くまなく国のありさまを御覧になって、冬木が芽吹く春になったら、飛ぶ鳥のように早くお帰り下さい。龍田の岡辺の道に、赤いつつじが色美しく咲き、桜の花が咲きはじめるその時に、私はまたお迎えに参りましょう。あなたが帰っていらっしゃると聞けば」

書き出し文

「白雲の 龍田の山の 露霜に 色づく時に うち越えて 旅行く君は 五百重山(いほへやま) い行きさくみ 敵(あた)まもる 筑紫に至り 山のそき 野のそき見よと 伴の部(へ)を 班(あか)ち遣はし 山彦の 答へむ極み たにぐくの さ渡る極み 国形を 見(め)したまひて 冬こもり 春さりゆかば 飛ぶ鳥の 早く来まさね 龍田道の 岡辺の道に 丹(に)つつじの にほけむ時の 桜花 咲きなむ時に 山たづの 迎へ参ゑ出む 君が来まさば」

宇合に対する壮行の歌。

つつじ:つつじ類の総称。集中九首詠まれています。この歌の丹(に)は、奈良の都にかかる枕詞「青丹よし」の丹と解釈すると、社寺などに塗られた色の赤ですが、こちらは赤い色の「つつじ」ということになります。

桜:サクラ バラ科。集中四十四首詠まれています。万葉集で詠まれている桜は、わが国固有の種だそうです。「サクラはおもしろきもの」何の変哲もなかった冬枯れの木肌から芽吹きます。

反歌一首

972番歌

訳文

「あなたは、敵が、たとえ千万の大軍勢であろうとも、とやかく言わずに討ち取って来られるに違いない立派な男子だと思っております」

書き出し文

「千万(ちよろづ)の 軍(いくさ)なりとも 言挙げせず 取りて来ぬべき 士(おのこ)とぞ思ふ」

相手の勇ましさを讃えて壮行の心を表した歌。

つつじと桜について、引用した本です。

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2010年3月の岡寺付近。

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岡寺

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峠の茶屋

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では、今日はこの辺で。

雪が積もっていません。まだ、初雪とは言えないのではないかと思います。

で、雪明りもまだです。