352.巻四・546~548:二年乙牛の春の三月に、三香の原の離宮(とつみや)に幸す時に、娘子を得て作る歌一首あわせて短歌 笠朝臣金村
546番歌
訳文
「三香の原で旅寝の寂しさをかこたねばならない折も折、道で行きずりに出逢って、空行く雲でも眺めるようによそ目に見るばかりで、言葉をかけるきっかけないので、いとしさにただ胸がいっぱいになっている時に、天や地の神様が仲を取りもって下さったおかげで、着物の袖を敷きかわして、この人こそ私の相手と頼りきっている今夜は、長い秋の夜を百ほど重ねたくらいの長さであってくれないかなあ」
書き出し文
「三香の原 旅の宿りに 玉桙の 道の行き逢ひに 天雲の 外のみ見つつ 言とはむ よしのなければ 心のみ 咽(む)せつつあるに 天地の 神言寄せて 敷栲の 衣手交へて 己妻と 頼める今夜 秋の夜の 百夜の長さ ありこせぬかも」
行幸先で公表した歌。事実めかして歌っている。前の女心を歌った旅の歌に対して、男心を歌った旅の歌が並べられているのは、編者が意図的に組み合わせたか。
咽せつつあるに:内にひそめた心があふれ出ようとするのを抑えるさまをいう。
言寄せて:言葉で男と女とを結びつける意。
547番歌
訳文
「空行く雲を眺めるようによそ目に見たその時から、あなたに心もひきつけられ、そしてからださえもすっかり結ばれてしまったよ」
書き出し文
「天雲の 外に見しより 我妹子に 心も身さへ 寄りにしものを」
548番歌
訳文
「楽しい今夜がまたたく間に明けてしまってはやるせないので、秋の長夜を百も集めた長さがほしいと、ひたすら乞い願った」
書き出し文
「今夜の 早く明けなば すべをなみ 秋の百夜を 願ひつるかも」
引用した本です。
今朝も良い天気で、今日の最高気温は14℃とか。
雪割り作業と庭の落ち葉拾いをしようと思っています。
では、今日はこの辺で。