282.巻三・388・389:羈旅(きりょ)の歌一首あわせて短歌
羈旅:旅の意、ここは公用の船旅での作。
388番歌
訳文
「海の神は霊威のあらたかな神だ。
淡路島を大海のまん中に立て置いて、白波を伊予の国までめぐらし、明石の海峡(せと)を通じて夕方には潮を満ちさせ、明け方には潮を引かせる。
その満ち引きの潮鳴りのする波が恐ろしいので、淡路島の磯かげで仮り寝をして、いつになったらこの夜が明けるだろうかと様子をうかがってまんじりともしないでいると、滝のほとりの浅野の雉が夜が明けたとて飛び立って騒いでいる。
さあ、みんな、勇気を出して船を漕ぎ出そうよ。
ちょうど海面もおだやかだ」
書き出し文
「海神は くすしきものか 淡路島 中に立て置きて 白波を 伊予に廻らし 居待月 明石の門(と)ゆは 夕されば 潮を満たしめ 明けされば 潮を干しむ 潮騒の 波を畏み 淡路島 磯隠り居て いつしかも この夜の明けむと さもらふに 寐(い)の寝かてねば 滝の上の 浅野の雉 明けぬとし 立ち騒くらし いざ子ども あへて漕ぎ出む 庭も静けし」
旅の帰途、波をさけて淡路島に仮り寝した翌朝、瀬戸内の海や島を支配する海神を讃えて、危険な船旅の安全を祈念し、船出をうながした歌。
389番歌
訳文
「海岸に沿うて敏馬の崎を漕ぎめぐってゆくと、家郷大和への思慕を募らせるように、鶴がたくさん鳴いている」
書き出し文
「島伝ひ 敏馬(みぬめ)の崎を 漕ぎ廻(み)れば 大和恋しく 鶴(たづ)さはに鳴く」
右の歌は、若宮年魚麻呂誦む。ただし、いまだ作者を審(つばひ)らかにせず。
大和へ帰る船の進みに従って、長歌のあとをついだ。
引用した本です。
今朝は7㎝ほどの積雪で、朝食前に雪かきをしました。
冷え込みました。
今日はこの辺で。