167.巻二・140:柿本朝臣人麻呂が妻依羅娘子、人麻呂と相別るる歌一首
巻二の相聞歌の最後です。
引用したのは下の本です。
140番歌
訳文
「そんなに思い悩まないでくれとあなたはおっしゃるけれど、今度お逢いできる日をいつと知って、恋い焦れないでいたらよいのでしょうか」
書き出し文
「な思ひと 君は言へども 逢はむ時 いつと知りてか 我が恋ひずあらむ」
依羅娘子は、人麻呂の妻の一人で、摂津・河内にまたがって「依羅」の郷があったことから、その地出臣身の、都の妻と見る説があるようですが、万葉集では131番歌の題詞に見える石見の妻と同一人とされている。224番歌と225番歌同様に、実際には人麻呂の作で、依羅娘子は石見妻を演じてこの歌を誦詠した女性か。
・・・人麻呂との別れ際の心情を示す歌として組み合わされたものらしい。合わされたのは131~133番歌と135~137番歌との群ができた時で、聴衆の求めに応じた人麻呂の所作らしい。依羅娘子は、実際には人麻呂の石見妻に扮してこの歌を誦詠した享受者の一人か。
いつと知りてか:「か」は反語的疑問・・・
引用を終わります。
次回の記載は、9月6日頃を予定しています。
巻一の雑歌、巻二の相聞、そして、巻二の挽歌へ続きます。
141番歌と142番歌の二首です。
では、今日はこの辺で。