517.巻六・969・970:三年辛羊に、大納言大伴卿、寧楽(なら)の家に在りて、故郷を思ふ歌二首
三年:天平三(731)年。この年秋七月二十五日、旅人は六十七歳で没した。以下病床での作。
故郷:明日香の古京。三十歳になるまで過ごした地。
969番歌
訳文
「ほんのちょっとでも出かけて行って見たいものだ。もしや神なび川の淵は浅くなってしまって、瀬になっていはしないだろうか」
書き出し文
「しましくも 行きて見てしか 神(かむ)なびの 淵はあせにて 瀬にかなるらむ」
神なび川の状況の変化を気づかった望郷歌。
神(かむ)なび:神のいます所の意。神のいます山や森をさす。明日香の「神なび」は橘寺南東のミハ山か。ここはその山に沿って流れる川、すなわち飛鳥川の意。
970番歌
訳文
「栗栖(くるす)の小野の萩の花が散るころには、きっと出かけて行って神祭りをしよう」
書き出し文
「さすすみの 栗栖の小野の 萩の花 散らむ時にし 行きて手向けむ」
さすすみの:栗栖の枕詞、黒縄の意。繰り寄せる、または黒の意でかかる。
栗栖:そこに生まれ育ったものだけが知っている明日香の小地名か。
手向けむ:手向くは、神に願いどとをして、幣(ぬき)を捧げること。
萩の花の散るころに病気回復と故郷訪問の望みを託した歌。455番歌参照。
橘寺:2010年3月
小樽の水仙福寿草は、今(2018年11月19日)やっと芽が出てきて、雪に蔽われ冬を越し、来年春に花を咲かせます。水仙は、福寿草の咲き終わった後に、花を咲かせます。
では、今日はこの辺で。