170.巻二・145:山上臣憶良が追和の歌一首
145番歌
訳文
「皇子の御魂(みたま)は天空を飛び通いながら常にご覧になっておりましょうが、人にはそれがわからない、しかし松はちゃんと知っていることでしょう」
書き出し文
「天翔(あまがけ)り あり通(がよ)ひつつ 見らめども 人こそ知らぬ 松は知るらむ」
(左注)
右の件(くだり)のを歌どもは、柩(ひつぎ)挽(ひ)く時に作るところにあらずといへども歌の意(こころ)を准擬(なずら)ふ。この故に挽歌の類に載す。
唱和:意吉麻呂の歌に後に唱和した意。143番歌だけに対している。憶良は大宝二年(702)に渡唐したが、その前か後かは不明。
人知らずとも松は知ると述べて、皇子への理解と共感を示した点に、憶良らしさがある。
「右の件」:右の五首の意で、141~145番歌。
「柩を挽く時にあらず」:葬儀の折に詠んだ歌ではないが、の意。
「歌の意を准擬ふ」:歌意を挽歌に準ずるものと認める、の意。
下の本を引用しました。
また、前に記載した141番歌と142番歌は、下の本も参考にしました。岩代に建つ、有馬皇子の結び松の記念碑、藤白の坂付近などの写真を掲載しています。
では、きょうはこの辺で。