147.巻二・89:或本の歌に日(い)はく
89番歌
訳文
「ここでじっと夜を明かしてあの方をお待ちしよう。この黒髪にたとえ霜は降(お)りようとも」
書き出し文
「居(ゐ)明かして 君を待たむ ぬばたまの 我が黒髪に 霜は降るとも」
右の一首は、古歌集の中に出づ。
新潮日本古典集成 万葉集一を参考にして、記載します。
87番歌は89番歌のような歌に手を加えたもの。なお、前の連作四首(このブログの145と146に記載しています)の類歌には持統朝頃の歌が目立つとのこと。
一方、起承転結の短歌四首を用いた最初の歌人は持統朝の人麻呂である。四首の構成者は人麻呂かもしれない。
居(ゐ)明かして:庭前で待つ姿
ぬばたまの:「黒髪」の枕詞、高校の授業で習ったな。
古歌集:万葉集の編纂に供された資料の一つ。巻二、七、九、十、十一に見え、飛鳥・藤原朝の歌を収める。「古集」とある場合もあるが、同じものか、と。
引用を終わります。
なお、90番歌は前に記載していますので、91番歌と92番歌を次回記載します。
集中の多くの相聞歌のうち、男女の歌が一対になるという本来の相聞歌としては、最初に登場するものです。
では、今日はこの辺で。