514.巻六・963・964:冬の十一月に、大伴坂上郎女、帥の家を発ちて道に上り、
筑前(つくしのみちのくち)の国の宗像(むなかた)の郡(こほり)の名児の山を越ゆる時に作る歌一首
963番歌
訳文
「この名児山の名は、神代の昔、国造りをした大国主命と少彦名命がはじめて名付けられたのであろうが、心がなごむという、その名児山の名を持っているばかりで、幾重にも重なるわが恋心の、その千のうちの一つさえも慰めてくれはしない」
書き出し文
「大汝(おほなむち) 少彦名の 神こそば 名付けそめけめ 名のみを 名児山と負ひて 我が恋の 千重の一重も 慰めなくに」
名児山の名に引かれて詠んだ歌。
964番歌:同じき坂上郎女、京に向ふ海道(うみぢ)にして、浜の貝を見て作る歌一首
訳文
「あの方に心引かれるのは苦しい。旅の暇があったら浜で拾って行こう、恋のつらさを忘れさせてくれるという忘れ貝を」
書き出し文
「我が背子に 恋ふれば苦し 暇あらば 拾(ひり)ひて行かむ 恋忘れ貝」
忘れ貝の名に引かれて詠んだ歌。
万葉集では貝を詠んだ歌が70首あり、7番目に登場する歌です。
お時間ありましたら、左のリンクのBIVALVES(myHP)の万葉集の貝の部屋を訪ねてみてください。
詠まれている貝、忘れ貝、貝を詠んだ歌の巻別一覧表などがあります。
引用した本です。
2016年9月の京都の旅で購入した本や絵葉書です。
では、今日はこの辺で。次回の記載は、11月14日を予定しています。