332.巻四・501~503:柿本朝臣人麻呂が歌三首
501番歌
訳文
「おとめが袖を振る、その布留山の端垣(みずかき)が大昔からあるように、ずっと前から私はあの人のことを思っていた」
書き出し文
「未通女(おとめ)らが 袖布留山の 端垣の 久しき時ゆ 思ひき我れは」
巻十一の「人麻呂集」に類歌2415番歌がある。
二重の序を用いている点も、巻十一・十二の寄物陳思歌(きぶつしんしか)に近い。
未通女らが:「袖」までが「布留」を、三句までが「久しき」を導く二重の序。「未通女」は「思ひき」の対象を暗示。袖振るは愛情を表現する動作。ここでは別れのしぐさを表す。
端垣:神域を限る垣。「みづ」はほめる意の接頭語。
502番歌
訳文
「草深い夏野を行く鹿の生えたての角の短さのように、ほんのしばらくでも私があの子の心を忘れていることがあろうか」
書き出し文
「夏野行く 小鹿の角の 束の間も 妹が心を 忘れて思へや」
前歌の久しいものに対して、短いものを序詞に用いて愛を歌った歌。
503番歌
訳文
「門出のざわめきが鎮まってみると、家に残した妻に何も言わないで来たような気持で、その心残りにたえきれない」
書き出し文
「玉衣(たまきぬ)の さゐさゐしづみ 家の妹に 物言はず来にて 思ひかねつも」
見送りの人が去って一人旅行く心を歌った歌。
玉衣の:さゐさゐの枕詞。
さゐさゐ:しほさゐ(潮騒)のさゐの重複。旅立ちの物せわしいざわめき。
引用した本です。
今日も春らしい暖かい朝を迎えました。
今日から庭の雪割り作業をしようと思います。
では、今日はこの辺で。