420.巻四・727・728:大伴宿禰家持、坂上家の大嬢に贈る歌二首 離絶すること数年、また会ひ相聞往来す
離絶:なぜはなれていたか不明
また会ひ:天平九(737)年ころのことか
相聞往来:たがいに消息を通じあう意
727番歌
訳文
「忘れ草を着物の下紐にそっとつけて、忘れようとはしてみたが、とんでもないろくでなしの草だ、忘れ草とは名ばかりであったわい」
書き下し文
「忘れ草 我が下紐に 付けたれど 醜(しこ)の醜草 言にしありけり」
独詠の形をとりつつ離絶の間も忘れられなかったと訴えた歌。
忘れ草:334番歌参照、萱草(かんぞう)、夏から秋にかけて黄赤色の花をつけるユリ科の多年草。中国で憂いを忘れさせる草と信じられていた。
下紐:着物の内側の紐で、外からは見えない。
醜(しこ)の醜草:罵りを表す「しこ」を重ねて、草に投げつける悪態の言葉とした。この句は挿入句。3062番歌に学んだもの。
728番歌
訳文
「じゃま者のいない国でもないのものか。あなたと手を取り合って行って、ずっと寄り添っていようものを」
書き下し文
「人もなき 国もあらぬか 我妹子(わぎもこ)と たづさはり行きて たぐひて居(を)らむ」
人もなき:「人」は二人の仲を噂の種にする第三者。
国もあらぬか:「も・・・ぬか」は願望を表す。
727番歌に応じた坂上大嬢の歌は次回記載します。
引用した本です。
今朝は静かな雨音で目を覚ましました。
本州のどの地域が梅雨が明けたのだか、関東周辺かな。
では、今日はこの辺で。