414.巻四・711~713:丹波大女娘子(たにはのおほめをとめ)が歌三首
711番歌
訳文
「鴨の鳥が浮かんでいるこの池に木の葉が散って浮くように、うきうきとうわついた気持でお慕いするのではありませんよ」
書き下し文
「鴨鳥の 遊ぶこの池に 木の葉落ちて 浮きたる心 我が思はなくに」
「雄略気」に見える三重采女の話や、3807番歌の元の采女の歌に似た趣を持つ。これらの話を背後に置きながら宴席で披露した歌で、家持も同席していたか。
712番歌
訳文
「三輪の社の神官があがめ祭っている神木の杉に手を触れでもしたその祟りでしょうか。いくら逢おうとしてもお逢いできないのは」
書き下し文
「味酒(うまさけ)を 三輪の祝(はふり)が いはふ杉 手触れし罪か 君に逢ひかたき」
自分は神木に触れたはずがないのに、という気持ちがこもる。517番歌と逆の立場に立つ歌である。
味酒:三輪の枕詞。17番歌参照。
祝:冷制では神主、禰宜に次ぐ職と定められているが、ここでは神官一般を言っている。
713番歌
訳文
「垣根のように二人の仲を隔てる他人の中傷を耳にして、あなたのお心がぐらついたのか、お逢い下さらないこのごろですね」
書き下し文
「垣ほなす 人言聞きて 我が背子が 心たゆたび 逢はぬこのころ」
以上三首、逢えない理由をさまざまに歌い立てているが、これが座の共鳴を呼んだのであろう。
垣ほなす:垣ほは隙間なくつまって高々と聳える垣。ここでは二人を隔てるものの譬喩。
引用した本です。
今日は良い天気のようです。
朝陽がきれいです。
では、今日はこの辺で。