409.巻四・703・704:座部麻蘇(かむなぎべのまそ)娘子が歌二首
座部麻蘇(かむなぎべのまそ)娘子:伝不詳
703番歌
訳文
「あなたにお目にかかったその日を思うにつけ、慕わしさに涙があふれ、今日までずっと袖の乾くいとまもありません」
書き下し文
「我が背子を 相見しその日 今日までに 我が衣手は 干(ふ)る時もなし」
前歌(702番歌)の「今日までに」を承ける。一度だけ逢った日のことが忘れられないという内容も前歌に近い。
干る:ひるは、当時上二段に活用した。その連体形。
704番歌
訳文
「たく棚のように長く生きつづけたいと望んできましたのは、いつもいつもあの方のお顔を見たいと思う一心からなのです」
書き下し文
「栲縄の 長き命を 欲(ほ)りしくは 絶えずて人を 見まく欲りこそ」
相手を三人称で表わし、その人に逢いたいと歌う内容は701番歌に近い。前歌と組になって河内百枝娘子の二首に和したものか。家持を交えた場で恋を主題に詠まれた歌群であろう。
(前の二首と一緒に記載すべきでした)
栲縄の:長きの枕詞。217番歌参照。
引用した本です。
今朝は、穏やかな初夏らしいです。
では、今日はこの辺で。