万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

396.巻四・670・671:湯原王が歌一首と和ふる歌一首作者を審(つばひ)らかにせず

670番歌

訳文

「お月様の光をたよりにおいでになってくださいませ。山が間に立ちはだかった遠い道のりではないのでしょうに」

書き下し文

「月読(つきよみ)の 光に来(き)ませ あしひきの 山を隔(へだ)てて 遠(とほ)からなくに」

男を待つ女の立場をよそおって詠んだ歌。

犬養氏の本を読んでから、記載しました。

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氏の本(46 月読の光)を引用するのは、この歌が良寛に受け継がれているということです。

「・・・・・良寛が、親しくした貞心尼という女の人と、歌のやりとりして、

「月読の 光を持ちて 帰りませ 山路は栗の いがの多きに」

良寛もうまいですね。この歌(670番歌)をなんとうまく生かしているでしょう。月読みの光を待ってお帰りあそばせ。帰したくないです、心の友は、帰したくない。山路は栗のいがが多いですから、足を怪我してはいけませんものねといういたわりですね。

良寛は万葉を大変愛した人ですから、月読の光に来ませのこの歌を、十分読み取って、そして自分の貞心尼を思うその心、いき届いたいたわる心、それがよく出ている。

じゃ湯原王のこのきれいな歌を、もう一度うたってみましょう。お月様ということを思ってね。

「月読(つきよみ)の 光に来(き)ませ あしひきの 山を隔(へだ)てて 遠(とほ)からなくに」

(氏の本には中秋の名月(明日香村月見の会の夜)の写真が掲載されています)

湯原王は、志貴皇子の孫、湯原親王の第二子と記されている(後紀)。

集中十九首よまれています(全短)。

375・376・377・631・632・635・636・638・640・642・670.985・986・989・1544・1545・1550・1552・1618番歌の計十九首です。

この歌で十一首記載したことになります。

671番歌

訳文

「なるほどお月様は明るく照らしていますが、あれこれと思い迷う心の闇に光が見えなくて、お尋ねする思いきりがつきかねていることです」

書き下し文

「月読の 光は清く 照らせれど 惑へる心 思ひあへなくに」

前歌に答えて、逢いに行くのをためらう男の立場に立つ歌。ともに月見の宴での作。 

引用した本です。

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今日は夏日との予報です。

では、今日はこの辺で。