万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

395.巻四・668・669:厚見王が歌一首と春日王が歌一首

668番歌

訳文

「朝ごと日ごとに色づいてゆく山、その山にかかる白雲がいつしか消えるように、私の心から消え去ってゆくようなあなたではないはずなのに」

書き下し文

「朝に日(け)に 色づく山の 白雲の 思ひ過ぐべき 君にあらなくに」

この歌の鮮明な色彩感は厚見王の歌に共通する。

朝に日(け)に:相手の美しさをも象徴する。

669番歌

訳文

「(あしひきの)山橘の実のようにはっきり色に出てください。そうしたら、人々が語り伝えて逢う機会もあるでしょう」

書き下し文

「あしひきの 山橘の 色に出でよ 語らひ継ぎて 逢ふこともあらむ」

山橘は、集中五首詠まれていて、この歌が最初です。

この春日王は、天智天皇の孫で、志貴皇子の子です。

万葉後期の著名歌人といわれています。

「やまたちばな」には、山にある野生の「たちばな」の意や、牡丹の異名などの意がありますが、ヤブコウジが定説のようです。

現在のヤブコウジヤブコウジ属の藪柑子にあたります。

同じく「山橘の色に出」と詠んだ歌に、2767番歌があります。

ここに山橘の色づく実のように、色に出して私は恋するだろうが、あなたは逢いにくくしないでください。があります。

ヤブコウジは、夏に紫おびた花を咲かせ、秋から初春にかけて赤い実をつけるようです。

葉がタチバナの葉に似ていることから、ヤマタチバナというようです。

夜麻多知婆奈・山橘

五首中四首が、「あしひきの山橘」と詠んでいます。

669番歌について引用した本です。

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668番歌は以下の本を引用しました。

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今日も暖かい良い天気になるようです。

では、今日はこの辺で。