394.巻四・664・665・666・667:大伴宿禰像見(かたみ)が歌一首、安倍朝臣虫麻呂が歌一首と大伴坂上郎女が歌二首
664番歌
訳文
「いくら降っても雨に降りこめられてなどいられるものか。あの子に逢いに行くよと言ったのだもの」
書き下し文
「石上(いそのかみ) 降るとも雨に つつまめや 妹に逢はむと 言ひてしものを」
665番歌
訳文
「面と向かっていくら見ても飽きることのないあなたのそばを、どうしたら離れられるか、そのてだてが私にはわからない」
書き下し文
「向ひ居(ゐ)て 見れども飽かぬ 我妹子に 立ち離れ行かむ たづき知らずも」
坂上郎女に贈った戯歌。
666番歌
訳文
「互いに顔を合わせなかったのはそんなに長い間でもないのに、こんなにもせつなく、私はあなたを恋いつづけています」
書き下し文
「相見ぬは 幾久さにも あらなくに こkだく我れは 恋ひつつもあるか」
虫麻呂からの贈歌以前の趣を持つ。次歌と組み合わせてわざと恋歌めかした返歌。
幾久さ:久しい期間がいくつも重なった状態の意で、きわめて長い期間をいう。
667番歌
訳文
「恋しい恋しいと思ってやっとお逢いできた今夜ですのに。空には月があるのでまだ真夜中なのでしょう。せめても少しこのままそばにいて下さい」
書き下し文
「恋ひ恋ひて 逢ひたるものを 月しあれば 夜は隠(こも)るらむ しましはあり待て」
(左注は省略します)
665番歌に答えたもの。いささか媚態をよそおって相手を引き留めようとしたところに戯れがある。
月しあれば:妻どいは月明を利して行うのが普通。相手が夕月のもとに訪れたのにその月がまだ没していない意。
夜は隠(こも)るらむ:昼の陽光から最も遠い真夜中であることを「隠る」で表す。
引用した本です。
今日は良い天気に恵まれ、最高気温が20℃を久しぶりに越えるようです。
では、今日はこの辺で。