390.巻四・651・652:大伴坂上郎女が歌二首
651番歌
訳文
「夜も更けて空から露がしっとりと降りました。家の人もきっと今ごろは待ち焦がれていることでしょう」
書き下し文
「ひさかたの 天の露霜 置きにけり 家なる人も 待ち恋ひぬらむ」
家で待つ娘を思う母心を歌うと見せて、同じ場所に居あわせた娘婿に、早く行くように促した歌か。相手は家持とも考えられるが、前後の歌の作者から見て次女、二嬢(おといらつめ)の相手として許した駿河河麻呂であろう。
652番歌
訳文
「大切な玉は番人に下げ渡したことだし、やれやれともかく私の方は、枕と二人でさあ寝るとしましょうか」
書き下し文
「玉守に 玉は授けて かつがつも 枕と我れは いざふたり寝む」
意にかなった男に娘を許した母親の、安堵感を一抹の寂しさとを、冗談めかした口つきに託した歌。
玉守:娘を玉に、相手の男をその番人に譬えたもの。
かつがつも:心底からは納得しない気持を残しながら行動に踏み切る意を表す。
枕と我れは いざふたり寝む:気楽さと空虚さの入りまじった複雑な心境が表されている。
引用した本です。
今朝は良い天気です。
朝焼けもきれいでした。
では、今日はこの辺で。