387.巻四・643~645:紀女郎が怨恨歌三首 鹿人大夫が女(むすめ)、名を小鹿といふ。安貴王が妻なり
紀女郎:家持が最も心を許して恋の遊びをした相手で、家持より年上らしい。
643番歌
訳文
「私がもし世の常の女であったなら、渡るにつけて「あああなた」と私が胸を痛めるこの痛背(あなせ)川を、渡りかねてためらうことはけっしてありますまい」
書き出し文
「世の中の 女(をみな)にしあらば 我が渡る 痛背の川を 渡りかねめや」
自分の方から川を渡ってでも逢いに行く(116番歌など)世の常の女のせっぱつまった行為すらできない自分の立場を怨む歌。
痛背の川:三輪山北麓を西流する穴師川
644番歌
訳文
「今となってはもう私はうちひしがれるばかりです。あれほど命の綱と思いつめたあなたのに、引き留められなくなったことを思うと」
書き出し文
「今は我は わびぞしにける 息の緒に 思ひし君を ゆるさく思へば」
ゆるさく:二人を結んでいた心のきずなを解きゆるめる意。「緒」に応じた表現。
645番歌
訳文
「交わし合った袖を引き離して別れなければならない日が近づくにつれて、悲しみがこみ上げただ泣き声をあげるばかりです」
書き出し文
「白栲の 袖別るべき 日を近み 心にむせひ 音のみし泣かゆ」
心にむせひ:悲しみを胸に納めておこうと努めても、抑えきれずにのどから洩れて出るさまをいう。
引用した本です。
今朝は晴れのようで、でも、夏日とはならない予報です。
ストーブを焚こうか迷う予想最高気温です。
では、今日はこの辺で。