378:巻四・619・620:大伴坂上郎女が怨恨歌(ゑんこんか)一首あわせて短歌
怨恨歌:恋における女の「怨恨」を主題にした歌で、中国の怨詩などに学んだものか。作者が関係した男性、藤原麻呂や大伴宿奈麻呂などへの怨みの歌と見る説もある。
619番歌
訳文
「長い難波菅の根ではないが、ねんごろにあなたが言葉をかけて下さって、何年にもわたって休みなく言い寄られたものだから、靡くまいと張りつめた心をゆるめてしまったその日からというものは、波のままにゆらめき靡く玉藻のように頼りなくためらう心は持たず、大船に乗ったように一筋にあなたを頼みきっていたのに、神様が二人の仲をさくようにし向けられるのか、あるいは生身の人間が邪魔だてしているのか、あれほど通よわれたあなたも来られないし、使いの者さえも顔を見せなくなってしまったので、どうにもやりきれなくて、夜は夜通し、昼は日が暮れるまで嘆いているが、そのかいもなく、いくら思い悩んでもそれを晴らすすべもなくて、「たわや女」のその名のとおり、たわいない子供のようにただ泣きしゃくりながら行きつ戻りつして、せめてあなたのお使いでもと待ちあぐんでいなければならないのでしょうか」
書き出し文
「おしてる 難波の菅の ねもころに 君が聞こして 年深かく 長くし言へば まそ鏡 磨ぎし心を ゆるしてし その日の極み 波と共 靡く玉藻の かにかくに 心は持たず 大船の頼める時に ちはやぶる 神か解くらむ うつせみの 人か障(さ)ふらむ 通はしし 肝も来まさず ず 玉梓(たまづき)の 使も見えず なりぬれば いたもすべなみ ぬばたまの 夜はすがらに 赤らひく 日も暮るるまで 嘆けども 験をなみ 思へども たづきを知らに たわや女(め)と 言はくもしるく たわらはの 音のみ泣きつつ た廻り 君が使いを 待ちやかねてむ」
五つの二句対、八つの枕詞や序詞・譬喩を重ねた、女性の作としては珍しい相聞の長歌。挽歌に多い発想や詩句も目立つが、これは怨恨を主題とする歌だからである。207~212番歌参照。
おしてる:「難波」の枕詞。
難波の菅の:難波は菅の産地として有名。
まそ鏡:「磨ぐ」の枕詞。
玉梓の:「使い」の枕詞。
赤らひく:「日」の枕詞。
たわや女:か弱い女。
しるく:顕著に
620番歌
訳文
「あなたが初めから、長い間言い寄って、頼りにさせるようにし向けなかったら、こんなつらい思いに逢ったりはしなかったでしょうに」
書き出し文
「初めより 長く言ひつつ 頼めずは かかる思ひに 逢はましものか」
逢はましものか:「ものか」は反語。
引用した本です。
今日の最高気温は、15℃と予想されています。
20℃ほどが過ごしやすいですね。
庭に咲く花々を5月15日に撮りましたので、貼り付けます。
オオバナノエンレイソウ:大花延齢草
この花も庭に。
勤めていたころに先輩で、野鳥に詳しい方がおられました。
でも、スズメやカラスは関心の対象外のようでした。
庭の蒲公英もそんな部類に入るのかなと思いつつ、撮りましたので貼り付けます。
では、今日はこの辺で。