350.巻四・537~542:高田女王(たかたのおほきみ)、今城王(いまきのおほきみ)に贈る歌六首
537番歌
訳文
「私の所へ来られない言いわけに、そんなにもきれいごとをおっしゃいますな。一日だってあなたをおそばに見ないと、私はとてもがまんができないのですよ」
書き出し文
「言清く いともな言ひそ 一日(ひとひ)だに 言いしなきは あへかたきかも」
今城王からの贈歌に答えた歌か。
538番歌
訳文
「人の噂がひっきりなしでうるさいので、お逢いしませんでした。浮気心があるように思わないで下さい、あなた」
書き出し文
「人言を 繁み言痛(こちた)み 逢はずありき 心あるごと な思ひ我が背子」
539番歌
訳文
「あなたさえいつまでも逢い遂げようとおっしゃってくささるなら、どんなに人が噂しようとも私は進んでお逢いしましょうものを」
書き出し文
「我が背子し 遂げむと言はば 人言は 繁くありとも 出でて逢はましを」
前歌に続いて逢わない言いわけをしながら、相手の気持次第と訴える歌。
540番歌
訳文
「これでもうあなたとお逢いする折がないのではないかと思うので、今朝のお別れがあんなにもやりきれなかったのでしょうか」
書き出し文
「我が背子に または逢はじかと 思へばか 今朝の別れの すべなくありつる」
後朝(きぬぎぬ)の別れを惜しみつつ、一夜訪れた相手を送り出した後、すぐに贈った歌。
541番歌
訳文
「現世では人の噂がやかましくて、思うようにお逢いできません。せめて来世にでもお逢いしましょう、あなた。今すぐにでなくても」
書き出し文
「現世(このよ)には 人言繁し 来む世にも 逢はむ我が背子 今ならずとも」
現世の恋の満たされない気持を誇張的に表現して、仏教的な来世観を持ち出した歌。
542番歌
訳文
「いつもいつも絶え間なしに通ってきたあの方の使いがやって来ない。もう逢うのをやめようかとためらっておられるのかしら」
書き出し文
「常やまず 通ひし君が 使来ず 今は逢はじと たゆたひぬらし」
前の五首が対詠的であるのび対し、この歌は独詠的である。
この六首は同時の作ではないが、相互に内容的な展開を与える形で編集したもの。
独詠歌が最後に置かれている時は、物語的な構成の意図があると見てよい。
85~88番歌、96~100番歌、123~125番歌など参照。
引用した本です。
夜半の激しい風や雨も止み、今朝は晴れのよい天気です。
残雪の状況を見て、雪割り作業をします。
庭では堅香子の花芽が見られます。
裏山の根開けが進んだ場所に難波津の花が咲いていました。
2018年4月9日小樽の裏山で
庭の福寿草:4月9日
庭の雪はほとんど消えていますが、家の裏と裏山の間にまだまだ雪が残っています。
では、今日はこの辺で。
次回の記載は4月16日を予定しています。