348.巻四・534・535:安貴王(あきのおほきみ)が歌一首あわせて短歌
534番歌
訳文
「わが妻が、遠くへやられてここにいないし、妻の所への道は遥かなので、逢うてだてもないままに、妻を思ってとても平静でいられないし、嘆きに胸を苦しめるばかりでどうにもできない。
空を流れる雲にでもなりたい。
高く天がける島にでもなりたい。
明日にも飛んで行って妻の安否を尋ね、禁を破って逢ったことで、私のためにも妻が咎められることがなく、妻のためにも私が咎められることもなく、今もかつての楽しかった日のように寄り添っていたいものだ」
書き出し文
「遠妻(とほづま)の ここにしあらば 玉桙(たまほこ)の 道をた遠み 思ふそら 安けなくに 嘆くそら 苦しきものを み空行く 雲にもがも 高飛ぶ 島にもがも 明日行きて 妹に言どひ 我がために 妹も事なく 妹がため 我れも事なく 今も見しごと たぐひてもがも」
禁じられた恋に陥って間を引きさかれた悲しみを歌った歌。
玉桙の:道の枕詞
事なく:罪状としてあげつらわれることなく、の意
535番歌
訳文
「妻の手を枕にして寝ることがないままに長い時間がたって、とうとう年を越してしまったものだ。
妻に逢っていないことを思うと」
書き出し文
「敷栲の 手枕(たまくら)まかず 間置きて 年ぞ経にける 逢はなく思へば」
よく堪えられたのもだという感慨を述べたもの。
敷栲の:手枕の枕詞
采女と臣下との恋愛は禁じられていた。
左注(略)に安貴王と采女との二人を不敬の罪に当てたと記載されている。采女の本国、因幡へ退けたという。
引用した本です。
今朝、外を見ると積雪ゼロ。
予報はいいほうに外れたようです。
では、今日はこの辺で。