万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

330.巻四・496~499:柿本朝臣人麻呂が歌四首

496番歌

訳文

「熊野の浦に群生する浜木綿は、葉が幾重にも重なり合っている。その重なる葉のようにあなたのことが心に深く思われるが、じかに逢う機会がなくて残念、早く逢いたいものだ」

書き出し文

「み熊野の 浦の浜木綿 百重なす 心は思へど ただに逢はむかも」

「熊野」は、もとの紀伊国牟婁郡の地名で現在の和歌山県の南部と三重県の一部にあたる。

海岸一帯が、今でも浜木綿の群生地として有名。

浜木綿は常緑の葉が万年青(おもと:ユリ科)に似ているので、「浜万年青」とも呼ばれる。

夏の一日が終わるころ、十数個の白色の花が傘形に咲き出す。

花びらが錨のように外側に曲がり、甘ったるい香りを漂わせる。

蒴果はまるく、熟すと灰白色の種子がはぜて砂の上にこぼれ落ちる。

種子は海綿質なので海水に浮かび、潮に流される。

なお、浜木綿を詠んだのは集中この一首だけです。

以上を引用した本です。

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以下四首は、人麻呂が創作した問答歌。

前二首が夫、後二首が妻の答えで、内容的には第一と第四、第二と第三が応じ合うという構成。

497番歌

訳文

「昔この世にいた人も、私のように妻恋しさに夜も眠れぬつらさを経験したことだろうか」

書き出し文

「いにしへに ありけむ人も 我がごとか 妹に恋ひつつ 寐(い)ねかてずけむ」

寐(い)ねかてずけむ:「かてず」は可能を表す下二段動詞「かつ」に、打消の「ず」が接したもの。

498番歌

訳文

「恋に悩むのは今だけのことではありません。それどころか、昔の人は、たえかねて声をさえたてて泣くほどに、もっと苦しんだものです」

書き出し文

「今のみの わざにはあらず いにしへの 人ぞまさりて 音(ね)にさへ泣きし」

前歌を承けて否定的に答えた歌。

わざ:行為。行動。

499番歌

訳文

「幾度も重ねてひっきりなしに来てほしいと思うせいで、あなたのお使いの顔をいくら見ても見飽きないのでしょうか」

書き出し文

「百重にも 来及(きし)かぬかもと 思へかも 君が使の 見れど飽かずあらむ」

496番歌の「百重」を承けて答えている。

来及(きし)かぬかも:「ぬかも」は願望を表す。

以上三首の記載を引用した本です。

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春の日差しを感じられる朝でした。

雪かきもなく、朝食前に読み終えた本です。

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では、今日はこの辺で。