309.巻三・429・430:溺れ死にし出雲娘子を吉野に火葬(やきほぶ)る時に、柿本朝臣人麻呂が作る歌二首
溺れ死:吉野行幸中の出来事か。
出雲娘子:出雲出身の采女か。
429番歌
訳文
「山の間から湧き出る雲、その雲のようだった出雲おとめは、まあ、あのはかない霧なのだろうか。吉野の山の嶺一帯に霧となってたなびいている」
書き出し文
「山の際(ま)ゆ 出雲の子らは 霧なれや 吉野の山の 嶺にたなびく」
山の際(ま)ゆ:出雲の枕詞。山の間から出る雲の意。
子ら:娘子を親しんでの称。前歌の妹と同じ。
霧なれや:霧ではあるまいに。やは反語。
430番歌
訳文
「盛んに立ちのぼる雲、その雲のようだった出雲おとめの美しい黒髪は、まるで玉藻のように吉野の川の波のまにまに揺らめき漂っている」
書き出し文
「八雲さす 出雲の子らが 黒髪は 吉野の川の 沖になづさふ」
おとめの水死体を黒髪の描出により象徴、美化した歌。
火葬の時点から遡って、「溺れ死」んだ時のさまを印象新たに蘇らせている。
前歌の山に川を対照させたのは吉野讃歌(36番歌から39番歌)の型によったもの。
なづさふ:ここでは水にもまれ、漂う意。
引用した本です。
今朝は冷え込みました。
でも、積雪は1㎝未満で、雪かきはなし。
読み終えた本です。
では、今日はこの辺で。