万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

254.巻三・331~335:帥大伴卿が歌五首

帥大伴卿:太宰府の長官、大伴旅人

331番歌は、328番歌~330番歌へと続いてきた「奈良の都」、特に、330番歌それを承けている。

331番歌

訳文

「私の若い盛んだった頃は、また戻って来ることがあろうか。もしかして、もう奈良の都を見ずに終わるのではなかろうか」

書き出し文

「我が盛り またをつめやも ほとほとに 奈良の都を 見ずかなりなむ」

332番歌:331番歌以下五首は、望郷の歌として一貫性をもつが、前歌で四綱の歌に答え終わり、この歌から、吉野・明日香へと慕情が移る。

旅人の真実の望郷の対象は、吉野・明日香であったのである。

訳文

「私の命はいつまでもあってくれないかなあ。昔見たあの吉野の象(さき)の小川に、も一度行って見ようと思うので」

書き出し文

「我が命も 常にあらぬか 昔見し 象の小川を 行きて見むため」

333番歌

訳文

「つらつらと物思いにふけっていると、あの若き日を過ごしたふるさとの明日香がしみじみと思い出される」

書き出し文

「浅茅原(あさぢはら) つばつばらに もの思へば 古りにし里し 思ほゆるかも」

334番歌:若者が恋忘れに用いた萱草(わすれぐさ:萱草:かんぞう)を持ち出して下紐につけるという点に、老人の情痴を装った若干の演技性が感じられる。

訳文

「萱草を下紐に付けました。香具山の聳えるふるさと明日香をいっそのこと忘れようと思って」

書き出し文

「忘れ草 我が紐に付く 香具山の 古りにし里を 忘れむがため」

335番歌:望郷の念は再び明日香から332番歌の吉野へ帰って結ばれた。332番歌の「行きて見むため」に対して、「淵(ふち)にしありこそ」という願望の形で応じている。

訳文

「私の任期はそう長くないだろう。あの吉野の、青い水をたたえている夢のわだよ、浅瀬になんかならずに、深い淵のままであっておくれ」

書き出し文

「我が行きは 久にはあらじ 夢のわだ 瀬にはならずて 淵にしありこそ」

夢のわだ:吉野の宮滝にある大岩に堰かれた淵の名。

引用した本です。

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今朝は小雨、屋根から落雪の処理で午前中奮闘。

この時期の雨は、雪を重くして、難儀します。

では、このへんで。