万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

198.巻二・217、21、219:吉備津采女が死にし時に、柿本朝臣人麻呂が作る歌一首あわせて短歌

吉備津采女:吉備の国(岡山県)の津の群出身の采女、歌によれば、采女の禁制を侵して結婚し入水自殺を遂げた。

217番歌

訳文

「秋山のように美しく照り映えるおとめ、なよ竹のようにたおやかなあの子は、どのように思ってか、長かるべき命であるのに、露なら夕に立って朝にはなくなるというが、はかなくも世を去ったという。

その噂を聞く私でさえも、おとめを生前ぼんやりと見過していたことが残念でたまらないのに、まして、手枕を交わし身に添えて寝たであろうその夫だった人は、どんなに寂しく思って一人寝をかこっていることであろうか。

どんなに心残りに思って恋い焦がれていることであろうか。

思いもかけぬ時に逝ってしまたおとめの、何とまあ、朝露のようにも夕霧のようにもあることか」

書き出し文

「秋山の したへる妹 なよ竹の とをよる子らは いかさまに 思ひ居れか 栲縄(たく)の 長き命を 露こそば 朝(あした)に置きて 夕は 消ゆといへ 霧こそば 夕に立ちて 朝は失すといへ 梓弓 音聞く我れも おほに見し こと悔しきを 敷栲の 手枕まきて 剣大刀 身に添へ寝けむ 若草の その夫の子は 寂しみか 思ひて寝らむ 悔しみか 思ひ恋ふらむ 時にあらず 過ぎにし子らが 朝露のごと 夕霧のごと

露と霧とをはかないものの譬喩として活用した最初の作品。

218番歌

訳文

「楽浪の志賀津の采女がひっそかりとこの世去って行った道、その川瀬の道を見ると、まことにうら寂しい」

書き出し文

「楽浪(ささなみ)の 志賀津の子らが 罷り道(ぢ)の 川瀬の道(みち)を 見れば寂しも」

歌の主人公は近江朝の采女だったらしい。

219番歌

訳文

「大津の采女に出逢った時に、はっきり見なかったことは、今にして思えばなんとも残念だ」

書き出し文

「そら数ふ 大津の子が 逢ひし日に おほに見しくは 今ぞ悔しき」

再び「おほに」を用い、霧の情緒の中で全体を閉じた。

そら数ふ:大津の枕詞

引用した本です。

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今朝の室温は、18℃とこの時期として暖かいです。

では、この辺で。