193.巻二・203:但馬皇女の薨ぜし後に、穂積皇子、冬の日に雪の降るに御墓を遥望(えうぼう)し悲傷流悌してつくらす歌一首
203番歌
訳文
「降る雪よ、たんとは降ってくれるな。吉隠の猪養(いかい)の岡が寒いであろうから」
書き出し文
「降る雪は あはにな降りそ 吉隠の 猪養の岡の 寒くあらまくに」
皇女の死は和銅元(708)年6月25日だから、その年の冬か翌年の冬であろう。
皇女の眠る岡はすなわち皇女その人なのである。
下二句は、萬葉が残したすぐれた表現の一つ。降る雪を完全にはとどめえないと知る心のほどもあわれが深い。
吉隠の猪養の岡:但馬皇女の墓地、吉隠は初瀬の東。「猪養の岡」はその東北方の山腹、志貴皇子の紀の陵のあるあたりか。
穂積皇子は藤原の地から吉隠を遥かに想い見ているのである。
引用した本です。
では、この辺で。
今朝の室温は14℃で、寒くなってきました。