万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

165.:巻二・135~137:石見相聞歌

135番歌

訳文

「石見の海の唐の崎にある暗礁にも深海松(ふかみる)は生い茂っている、荒磯にも玉藻は生い茂っている。

その玉藻のように私に寄り添い寝た妻を、その深海松のように深く深く思うけれど、共寝した夜はいくらもなく這う蔦別れるように別れて来たので、心痛さに堪えられず、ますます悲しい思いにふけりながら振り返って見るけれど、渡(わたり)の山のもみじ葉が散り乱れて雲間を渡る月が名残惜しくも姿を隠して行くように、ついに妻の姿が見えなくなったその折しも、寂しく入日がさして来たので、ひとかどの男子だと思っていた私も、衣の袖は涙で濡れ通ってしまった」

書き出し文

「つのさはふ 石見の海の 言さへく 唐(から)の崎なる 海石(いくり)にぞ 深海松(ふかみるお)生(お)ふる 荒磯(ありそ)にぞ 玉藻は生ふる 玉藻なす 靡(なび)き寝し子を 深海松の 深めて思へど さ寝し夜(よ)は 幾時(いくだ)もあらず 延(は)ふ蔦の 別れし来れば 肝向ふ 心を痛み 思ひつつ かへり見すれど 大船の 渡の山の 黄葉の 散りの乱(まが)ひに 妹が袖 さやにも見えず 妻ごもる 屋上の山の 雲間より 渡らふ月の 惜しけども 隠らひ来れば 天伝(あまづた)ふ 入日さしぬれ ますらをと 思へる我れも 敷栲(しきたえ)の 衣の袖は 通りて濡れぬ

反歌二首

136番歌

訳文

「この青駒の歩みが速いので、雲居はるかに妻のあたりを通り過ぎて来てしまった(妻のあたりは次第にみえなくなって来た)」

書き出し文

「青駒が 足掻(あが)きを速(はや)み 雲居(くもゐ)にぞ 妹があたりを 過ぎて来にける 一には「あたりは 隠り来にける」といふ」

137番歌

訳文

「秋山に散るもみじ葉よ、ほんのしばらくでもいいから散り乱れてくれるな、妻のあたりを見ようものを」

引用した本です。

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あわせて一読の本です。

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今朝は、雨です。では、この辺で。