160.巻二・123、124、125:三方沙弥、園臣生羽が娘を娶りて、幾時も経ねば、病に臥して作る歌三首
下の本を引用して記載します。
「三方沙弥という男が園臣生羽という人の娘と結ばれた。沙弥は乙女を熱愛し、乙女も沙弥を恋い慕った。しかし沙弥はまもなく病気にかかり、若妻のもとを訪ねることができなくなった。彼は悲しんで妻に歌を送った。」
123番歌(三方沙弥)
訳文
「束ねて結うには、まだ短く、結わねば長すぎるあなたの髪。このごろは逢いにもいけないから、さぞやきれいに櫛を入れて整えてしまったことだろうね」
書き出し文
「たけばぬれ たかねば長き 妹が髪 この頃見ぬに 掻きれつらむか」
それに対して乙女が答えたのが下の歌
124番歌
訳文
「人は皆、髪が長くなりすぎたね、束ねて大人の女らしくおし、と言います。でもこのままでいいの、あなたの見た髪は、あの日以来そのままにしています。たとえ乱れていても」
書き出し文
「人みな 今は長しと たけといへど 君が見し髪 乱れたりとも」
ほかにも多くの歌でその実例が示されているが、古代人は次に逢う日まで、髪型もそのままにしておこうとする習慣があったらしい。
歌をもらった男は、なんというでしょうか。たまらなくなって、次の歌を送っています。
なお、この歌は、下の本を参考に記載しました。
125番歌
訳文
「橘の並木の影を踏んで行く道の、多くの岐れ道そのままに、あれやこれやと思い悩むことよ。あの子に逢わないでいて」
書き出し文
「橘の 影踏む道の 八衢(やちまた)に ものをそ思ふ 妹にあはずして」
犬養氏は「橘の影踏む道の八衢にも、千々に思い乱れますよよと。男はたまらない気持になるんですね。こういうすばらしい恋の濃艶な、そして具象的な恋のやり取り。その歌がこれです。歌は音楽だということが、これでしみじみ感じられますね。ではうたってみよう」と。
そして、三首を最後に記載しています。
では、最後に宮田氏の切り絵の乙女を観ながらうったてみましょう。
では、今日はこの辺で。