万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

145・巻二・85・90:磐姫皇后、天皇を思ひ作らす歌四首:今回その第一首と90番歌です。

巻二:相聞

難波の高津の宮に天の下知らしめす天皇の代

大鷦鷯(おほさざきの)天皇、諡(おくりな)して仁徳天皇といふ

  (鷯と鷦、この字の返還に苦労しました)

85番歌

訳文

「あの方のお出ましは随分日数がたったのにまだお帰りにならない。山を踏みわけてお迎えに行こうか。それともこのままじっと待ちつづけようか」

書き出し文

「君が行き 日(け)長くなりぬ 山尋ね 迎へか行かむ 待ちにか待たむ」

右の一首は、山上憶良臣が類聚歌林に載す。

90番歌:軽太郎女

訳文

「わが君の旅は随分日数が長くなったな。お迎えに行こうか。待ってなどとてもいられるものか」

書き出し文

「君が行 日長くなりぬ 迎へを行かむ 待つには待たじ」(巻二・90 軽太郎女)

犬養氏の本の「16磐姫皇后陵」を引用します。

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85番歌は、・・・連作の最初の歌なんです。

すなわち、磐姫皇后といえば、仁徳天皇の皇后ですね。それでその皇后さんが、天皇を思ってつくった歌というわけ、歌の意味は、あなたさまのお出かけは、ずいぶん日数が長くなった。だからやりきれないでしょう。そこで山を尋ねて、お迎えに行こうかしら、それとも待ちに待とうかしらと迷っている心持ちですね。これを磐姫さんの歌とすれば、まさに万葉集で一番古い歌になるんですよ。

ところがこれはいろいろ問題のある歌なんですね。

・・・長くなるので略します、古事記などの記載も紹介しています・・・

仁徳天皇には、たくさんの女性との間に恋愛の話がいっぱいあるんですね。

そこで磐姫さんという人は、最も嫉妬深い人なんですね。だって一夫多妻の時代に、仁徳さんにはたくさんの奥さんがいらっしゃる時代に、愛は一対一でなきゃ承知できない人。磐姫さんは、まさに今日からいえば先駆者みたいですね。

・・・嫉妬の例を紹介・・・

そんなふうすから、磐姫さんというのは、万葉時代に猛烈に情熱の強い人だという伝えがあったんでしょうね。この歌は元来は民謡のようなものなんです。

ということは「古事記」の中に、こういう話がある。允恭(いんぎょう)天皇の坊ちゃんとお嬢さんが結婚しちゃった。だからお兄ちゃんのほうは処罰されて、伊予の道後温泉に流される。後に残った妹である軽太郎女というのが、恋慕に耐えきれないで詠んだ歌が90番歌。そっくりですよね。

・・・90番歌を記載・・・

よく似ているでしょう。これはほうぼうで歌われている伝承歌。それが磐姫が情熱的な人だというので、その人の話に結びつけられているんですね。そして磐姫さんが夫を待つ時の激しい気持ちだと、いい伝えているわけです。

あなたさまのお出かけは日数が長くなった。ああ、もうこうしていられない。山を尋ねて迎えに行こうか、待ちに待とうか。ああ思い、こう思う心持、それじゃ歌ってみましょう。

「君が行 日(け)長くなりぬ 山尋ね 迎へ行(ゆ)かむ 待ちにか待たむ」(巻二・90 磐姫皇后)

では、今日はこの辺で。

後の三首は次回に記載します。