140.巻一・76、77:和同元年戊申 天皇の御製と御名部皇女の和へ奉る御歌
76番歌
訳文
「勇士たちの鞆(とも)音が聞こえてくる。物部の大臣が楯を立てているらしいよ」
書き出し文
「ますらをの 鞆の音すなり 物部の 大臣(おほまへつきみ) 楯立つらしも」
天皇は元明天皇。即位の時に、石上、榎井二氏が楯を立てる慣習があった。ここは元明天皇即位による大嘗祭のためか。鞆:弓を射るとき、左の臂(ひじ)に巻いて弦のあたるのを防ぐ防具。物部氏は天武朝に石上の氏を賜った。
77番歌
訳文
「わが君よ。お心遣い遊ばしますな。皇祖の神が大君にそえてこの世に下し賜った私というものがお側にいるではございませんか」
書き出し文
「我が大君 ものな思ほし 皇神(すめかみ)の 継ぎて賜へる 我がなけなくに」
御名部皇女(みなべのひめみこ):天智天皇の皇女。元明天皇の同母姉。高市皇子の紀となり、長屋王の母。前の歌を任の重さへの不安をこめた歌と見なして和したもの。なけなく:二重否定。
今日も下の本で。
では、この辺で。百合が原公園で撮った百合。