115.巻一・20、21:天皇、蒲生野に遊猟する時に、額田王の作る歌と皇太子の答ふる御歌
20番歌:天皇、蒲生野(かまふの)に遊猟(みかり)する時に、額田王の作る歌
「あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」
<歌意>
((あかねさす)紫野を行ったり、標野を行ったりして、野守は見ているではありませんか。あなたが私に向かって袖を振っているのを)
21番歌:皇太子(ひつぎのみこ)の御歌
「紫の にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに 我恋ひめやも」
<歌意>
(紫の如く輝くように美しいあなたを憎いと思うなら、人妻であるのに恋しく思うだろうか)
紀に日(いは)く、「・・・・の夏五月五日、蒲生野に縦猟す。ここに大皇弟(ひつぎのみこ)・諸王・内臣・また群臣、皆悉従ふ」といふ。
記載に参照し引用した本↓
あかねと紫草(むらさき)のきれいな写真の本↓
あかね:葉や茎に小さなトゲを持つ。・・・その根はみごとな朱赤の染料となる。
紫草:夏になると、白い小さな花が咲く。根が紫の染料となるため、万葉の世界では華やかな存在。
歌の説明も一読の価値あり。
115.を記載するにあたり参考にした本↓
この115.で記載に引用した本です。↓
本のリービ英雄氏の「万葉集は新しい」、宮田雅之氏の「万葉逍遥」、ドナルド・キーン氏の「宮田さんの切り絵」、大岡 信氏の「解説序文」を読んで、万葉恋歌の最初が20番歌です。その解説文は以下に。
「・・・万葉恋歌といえばこの歌、と決めている人も多いだろう。開巻まもなく出てくるので一層印象が強い。この歌に対して、手を振った当の人である大海人皇子の歌(21歌番)次に出ている。
(21番歌を記載)
今は人妻になっているかっての妻に贈った恋歌である。近代以後なら当然そこに三角関係を想像することであろう。前夫の大海人皇子と、現在の夫たる天智天皇の二人の間で揺れ動く女ごころ、それが大海人皇子に向けたこの歌の中にあるーーーそう読んで胸ときめかした人々も多い。
しかしそういう三角関係的な秘話は残念ながら古代のこの男女の関係には当てはまらない。でも、それはそれでいいのではないか。この歌、音調はいいし内容は心そそるし、それに大海人の彼女を讃える返歌も打てば響くようについていて、2首相まってめだたい恋歌なのだろう。」と。
犬養氏と杉本氏の本も一読して、記載しました。
「浦生野は、・・・、今の近江八幡市の武佐南野・安土町内野や東近江市浦生野・野口・市辺一帯の平野である。近江鉄道八日市線の市辺駅から約500メートル北方にある船岡山は、現在「万葉の森船岡山」として」整備されている。標高一五二メートルほどの山頂には、元暦校本「万葉集」の文字を刻した二十。二十一歌、二首の万葉歌碑があり、山裾には紫草など一〇〇種を植えた万葉植物園が造られているいる。ここは阿賀神社の横から登ることができる。」と上の本は、歌の解説を締めくくっている。
花が詠まれているので、手持ちの本も少し多いかな。では、この辺で、もうじき午前五時なので。