万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

87.万葉集に詠まれている花(22)次嶺(つぎね)・ヒトリシズカ・フタリシズカ(一人静・二人静)

「つぎね」は、万葉植物の中でも難解なもののひとつであるようです。植物名ではないとする説が有力なのだそうですが、ヒトリシズカやフタリシズカとする説も捨てがたいようです。

で、手持ちの数少ない蔵書を調べるとヒトリシズカ・フタリシズカとして、紹介しています。ただ、万葉名の「つぎね」は、古来さまざまな解釈が行われたと説明しています。そして、植物名ではなく「数多く続く峰々」とか「つぎねの生えている場所」という意味だとかなどの説を紹介しています。

ヒトリシズカの名前は、悲劇の武将、源義経が寵愛した静御前が、一人で舞う姿にたとえてつけられました。一方、フタリシズカは、茎の先に花穂が二本並んで咲くところからついたもので、謡曲の「二人静」で、静御前の霊と、その霊にとりつかれた菜摘女とが二人で舞う姿になぞらえたもののようです。

なお、小樽周辺でフタリシズカの花を撮っていないので、小樽海岸自然探勝路で2014年5月28日に撮ったヒトリシズカを掲載します。

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一人静は、別名「眉掃草」、「吉野静」の名前で呼ばれ、「吉野静」は、吉野山に舞う静御前の姿に見たてたものだそうです。

集中次の一首だけです。

「つぎねふ 山背道(やましろぢ)を 他夫(ひとづま)の 馬より行くに 己夫し 徒歩より行けば 見るごとに 音のみし泣かゆ そこ思ふに 心し痛し たらちねの 母が形見のと 我が持てる まそみ鏡に 蜻蛉領布(あさづひれ) 負ひ並め持ちて 馬買へわが背」作者未詳(巻13・3314)

歌意(つぎねの咲く山城への道を、よその夫は馬で行くのに、私の夫は歩いて行く・・・・・。それを見ると泣けてくるし、心が痛むわ。母の形見のよく澄んだ鏡と、とんぼの羽のように薄くて美しい領巾を持って行ってくださいな。それで馬をお買いなさい、ね、あなた)

どちらの花もセンリョウ科の花で、探勝路の道端などでひっそりと咲いています。

地味な花ですが、何か惹かれます。 

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