万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

82.春季のうた:霞(かすみ)

新暦の2014年2月24日から2月28日は、旧暦の二十四節気での二節気の雨水に、七十二候での五候の霞始靆(かすみはじめてたなびく)になります。

霞がたなびき始める頃、霞が春景色を彩り始める頃のようです。

でも、小樽では積雪1m以上で、裏山のそれは1.5m以上です。

1)から5)裏山にて今日2014年2月26日撮影

1)

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2)

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3)

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4)

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5)

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景色からは春を感じとることは難しいです。

ただ、日の出や日の入りの時刻そして日差しの強さから春の近づきを感じています。

この季の花は本州では沈丁花をあげることができるのでしょう。

沈丁花室町時代に中国から渡来したようです。

また、裏山では雪の下で同じジンチョウゲ科の難波津が、雪の消えた裏山で真っ先に花を咲かせようとじっと息をひそめています。

集中のこの季のうたとして、大伴家持の歌をあげたいと思います。

歌は巻19・4290です。

6)難波津:2013年11月5日撮影

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7)難波津:2013年11月5日撮影

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大伴家持の歌で一番好きな歌は、越中秀吟の第五首の堅香子の歌(巻19・4143)なのですが。

8)堅香子:裏山で2013年5月10日撮影

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「春の野に 霞たなびき うら悲(がな)し この夕影に うぐいすなくも」

天平勝宝五(七五三)年二十三日に興に依りて作る歌二首の一首です。

(春の野に霞がたなびいて、もの悲しい。この夕方の光の中で鶯が鳴くよ。)

家持の「絶唱」と評されている三首の一首です。

天平勝宝五(七五三)年二月二十三、五日付の三首です。

二十三日のもう一首は、巻19・4291です。

「我がやどの いささ群竹(むらたけ) 吹く風の 音のかそけき この夕(ゆふへ)かも」

(うちの庭の少しばかりの竹林に吹く風の音のかすかなこの夕べよ)

二十五日に作る歌は、巻19・4292です。

「うらうらに 照れる春日に ひばり上がり 心悲(こころがな)しも ひとりし思へば」

(うらうらと照っている春の日にひばりが上がり、悲しいことよ。一人で思っていると。)

以上は神野志隆光編(2010)万葉集鑑賞事典、講談社学術文庫によります。

本州では霞は春の風物詩のようです。

春の霞感覚は、雪に覆われて一番雪の多いこの時期の小樽では実感がないのです。

小樽の裏山に霞たなびき、鶯鳴くころ、この季の歌をもう一度思い出し、声に出して読んでみよう。

「春の野に 霞たなびき うら悲(がな)し この夕影に うぐいすなくも」

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