万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

355.巻四・553・554:丹生女王(にふのおほきみ)、大宰帥大伴卿に贈る歌二首

大宰帥大伴卿:大伴旅人 丹生:420番歌の丹生王と同一人物か 553番歌 訳文 「あなたのいらっやる筑紫は、天雲の果ての遠方ですが、心の方がそこまで通って行くから、お顔まで見たいとしきりに恋われるのですね」 書き出し文 「天雲の そくへの極み 遠けども …

354.巻四・552:大伴宿禰三依が歌一首

552番歌 訳文 「ご主人殿はこの小僧めを死ぬとでもお思いなのでしょうか。逢って下さる夜、下さらぬ夜と、目まぐるしく二道かけて気をもませられますなあ」 書き出し文 「我が君は わけをば死ぬと 思へかも 逢ふ夜逢はぬ夜 二走るらむ」 戯れに相手の女性を…

353.巻四・549~551:五年戊辰に、大宰少弐石川足人朝臣が遷任するに、筑前の国蘆城の駅家に餞する歌参首

餞する:送別の宴 49番歌 訳文 「天地も神も加護を賜って道中の安全を助けて下さい。はるばる都まで旅するこの方が家に帰りつくまで」 書き出し文 「天地の 神も助けよ 草枕 旅行く君が 家にいたるまで」 旅の安全を祈る歌を贈るのが送別の儀礼であった。 55…

352.巻四・546~548:二年乙牛の春の三月に、三香の原の離宮(とつみや)に幸す時に、娘子を得て作る歌一首あわせて短歌 笠朝臣金村

546番歌 訳文 「三香の原で旅寝の寂しさをかこたねばならない折も折、道で行きずりに出逢って、空行く雲でも眺めるようによそ目に見るばかりで、言葉をかけるきっかけないので、いとしさにただ胸がいっぱいになっている時に、天や地の神様が仲を取りもって下…

351.巻四・543~545:神亀元年甲子の冬の十月に、紀伊の国に幸す時に、従駕(おほみとも)の人に贈らむために娘子に誂(あとら)へらえて作る歌一首あわせて短歌  笠朝臣金村

543番歌 訳文 「天皇の行幸につき従って、数多くの大宮人たちと一緒に出かけて行った、ひときわ端麗な私の夫は、軽の道から畝傍山を見ながら紀伊街道に足を踏み入れ、真上山を越えてもう山向かうの紀伊に入っただろうが、その夫は、黄葉の葉の散り乱れる風景…

350.巻四・537~542:高田女王(たかたのおほきみ)、今城王(いまきのおほきみ)に贈る歌六首

537番歌 訳文 「私の所へ来られない言いわけに、そんなにもきれいごとをおっしゃいますな。一日だってあなたをおそばに見ないと、私はとてもがまんができないのですよ」 書き出し文 「言清く いともな言ひそ 一日(ひとひ)だに 言いしなきは あへかたきかも…

349.巻四・536:門部王(かどへのおほきみ)が恋の歌一首

536番歌 訳文 「意宇(おう)の海の潮干の干潟ではないが、かた思いにあの子のことを思いつづけながらたどることになるのか。長い長い道のりを」 書き出し文 「意宇(おう)の海の 潮干の潟(かた)の 片思(かたもひ)に 思ひや行かむ 道の長手を」 左注を…

348.巻四・534・535:安貴王(あきのおほきみ)が歌一首あわせて短歌

534番歌 訳文 「わが妻が、遠くへやられてここにいないし、妻の所への道は遥かなので、逢うてだてもないままに、妻を思ってとても平静でいられないし、嘆きに胸を苦しめるばかりでどうにもできない。 空を流れる雲にでもなりたい。 高く天がける島にでもなり…

347.巻四・532・533:大伴宿奈麻呂宿禰が歌二首

532番歌 訳文 「宮仕えのために出て行くあなたがいとしくてしかたがないので、引き留めると心苦しいし、かといって行かせるのはやりきれない」 書き出し文 「うちひさす 宮に行く子を ま悲しみ 留むれば苦し 遣ればすべなし」聖武天皇の難波宮へ宮仕えに出か…

346.巻四・530・531:天皇(すめらみこと)、海上女王(うなかみのおほきみ)に賜ふ御歌一首と海上女王が和へ奉る歌一首

天皇:45代聖武天皇 海上女王:志貴皇子の娘。 530番歌 訳文 「うっかりすると元気な赤馬が越えて逃げる馬柵(ませ)を結い固めるように、私のものと標(しめ)を結って固めておいたあなたの心には、なんの疑いもない」 書き出し文 「赤駒の 越ゆる馬柵の 標…

345.巻四・522~529:京職(みさとつかさ)藤原太夫が大伴郎女に贈る歌三首と大伴郎女、和(こた)ふる歌四首、また大伴坂上郎女が歌一首

藤原太夫:藤原麻呂。不比等の第四子で京家の祖。 大伴郎女:大伴坂上郎女 522番歌(~524番歌までの三首) 訳文 「おとめの玉櫛笥に納めてある玉櫛は神さびているというが、私の方は神さびたじいさんなったことだろうね。長くあなたに逢わずにいるから」 書…

344.巻四・521:藤原宇合大夫(ふじはらのうまかひのまへつきみ)、遷任して京に上る時に、常陸娘子が贈る歌一首

常陸娘子:常陸の国の女性の意。あるいは遊行女婦か。 521番歌 訳文 「庭畑に並び立っている麻を刈って干し、織った布を日にさらす、この田舎くさい東女のことをお忘れくださいますな」 書き出し文 「庭に立つ 麻手刈り干し 布曝す 東女を 忘れたまふな」 庭…

343.巻四・519・520:大伴郎女が歌一首と後の人の追同する歌

大伴郎女:伝未詳。後に大伴旅人の妻になった女性とする説もある。 追同:時がたってから前歌に唱和する意。編者が唱和したものであろう。 519番歌 訳文 「雨を口実にしては、いつも家に籠っていて、おいで下さらないあなたは、ゆうべ来られた時に降った雨に…

342.巻四・517・518:大納言兼大将軍大伴卿の歌一首と石川郎女が歌一首

大納言兼大将軍大伴卿:大伴安麻呂。 517番歌 訳文 「罪をこうむるという神木にさえ手はふれるというものを、あなたが人妻だからとて、まだ手をふれぬことよ。心に願いながら」 書き出し文 「神樹(かむき)にも 手は触るといふを うつたへに 人妻と言へば …

341.巻四・514、515、516:安倍郎女が歌一首、中臣朝臣東人が安倍郎女に贈る歌一首と安倍郎女が答ふる歌一首

514番歌 訳文 「縫ってさし上げる、あなたのお着物の、針目にのこらず入ってしまったようです。糸ばかりか、私の心まで」 書き出し文 「我が背子が 著(け)せる衣の 針目おちず 入りにけらしも 我が心さへ」 著(け)せ:キルの敬語。見ル→メスと同じ。 次…

340.巻四・513:志貴皇子の御歌一首

513番歌 訳文 「大原のこの神聖ないつ柴のように、いつ逢えるかと願っていたあなたに今夜逢えたことよ」 書き出し文 「大原の この厳柴(いつしば)の 何時(いつ)しかと わが思う妹に 今夜(こよい)逢へるかも」 万葉仮名 「大原乃 此市柴乃 何時鹿跡 吾…

339.巻四・512:草嬢(くさのをとめ)が歌一首

草嬢:未詳、田舎娘の漢語風表現か 512番歌 訳文 「穂の垂れた秋の田の、隣り合った稲刈り場で、ついこんなに二人が近寄ってしまったら、それさえ噂の種に取り上げて、人は私のことをとやかく言いふらすでしょうか」 書き出し文 「秋の田の 穂田(ほだ)の刈…

338.巻四・511:伊勢の国に幸(いでま)す時に当麻麻呂太夫(たぎまのまろのまへつきみ)が妻(め)の作る歌一首

伊勢の国に幸(いでま)す時:重出歌43番歌によれば持統六(692)年の行幸。 511番歌 訳文 「夫はどのあたりを旅しているのであろう。名張の山を今日あたり越えていることであろうか」 書き出し文 「我が背子は いづく行くらむ 沖つ藻の 名張の山を 今日か越…

337.巻四・509・510:丹比真人笠麻呂、筑紫の国に下る時に作る歌一首あわせて短歌

509番歌 訳文 「女官の櫛箱に載っている鏡を見つというのではないが、御津の浜辺で着物の紐も解かずに妻恋しく思っていると、明け方の霧に包まれた薄暗がりの中で鳴く鶴のように、暗い気持で泣けてくるばかりだ。 せめてこの恋心の千分の一でも晴れようかと…

336.巻四・508:三方沙弥が歌一首

三方沙弥:123番歌参照、伝未詳、「沙弥」は入門したばかりの僧の称であるが、ここでは呼び名か。 508番歌 訳文 「二人でかわして寝た袖、この袖を分けて離れ離れになる今夜からは、あなたも私も恋心に責められることだろう。また逢うてだてもないのだから」…

335.巻四・507:駿河采女が歌一首

駿河采女:駿河の国駿河の郡出身の采女(うねめ) 507番歌 訳文 「枕を伝わってあふれ落ちる涙の川で、浮寝をしました。募る恋心のために」 書き出し文 「敷栲の 枕ゆくくる 涙にぞ 浮寝をしける 恋の繁きに」 恋の苦しさを誇張して表現した歌。 敷栲の:こ…

334.巻四・505・506:安倍郎女が歌二首

安倍郎女:伝未詳、269番歌に歌があります。 505番歌 訳文 「今さらなんの物思いをいたしましょう。私の心はすっかりあなたに靡き寄っていますものを」 書き出し文 「今さらに 何をか思はむ うち靡き 心は君に 寄りにしものを」 506番歌 訳文 「あなたはくよ…

333.巻四・504・柿本朝臣人麻呂が妻の歌一首

504番歌 訳文 「あなたを忘れないのはもちろんのこと、ご一緒に住みたいとまで思うあなたの家につながる住坂の道をさえ、けっして忘れることはありません。私の命のある限りは」 書き出し文 「君が家に 我が住坂の 家道をも 我れは忘れじ 命死なずは」 住坂…

332.巻四・501~503:柿本朝臣人麻呂が歌三首

501番歌 訳文 「おとめが袖を振る、その布留山の端垣(みずかき)が大昔からあるように、ずっと前から私はあの人のことを思っていた」 書き出し文 「未通女(おとめ)らが 袖布留山の 端垣の 久しき時ゆ 思ひき我れは」 巻十一の「人麻呂集」に類歌2415番歌…

331.巻四・500:碁檀越(ごのだにをち)、伊勢の国に行く時に、留まれる妻(め)の作る歌一首

碁檀越:碁は氏の名。檀越は寺の施主の意で、称号か。 500番歌 訳文 「伊勢の浜の萩を折り伏せてあの人は旅寝をしておられることであろうか。あの波風荒い浜辺で」 書き出し文 「神風の 伊勢の浜萩 折り伏せて 旅寝やすらむ 荒き浜辺に」 神風:伊勢の枕詞 …

330.巻四・496~499:柿本朝臣人麻呂が歌四首

496番歌 訳文 「熊野の浦に群生する浜木綿は、葉が幾重にも重なり合っている。その重なる葉のようにあなたのことが心に深く思われるが、じかに逢う機会がなくて残念、早く逢いたいものだ」 書き出し文 「み熊野の 浦の浜木綿 百重なす 心は思へど ただに逢は…

329.巻四・492~495:田部忌寸檪子(たべのいみきいちひこ)、太宰に任(ま)けらゆる時の歌四首

田部忌寸檪子:伝不詳、忌寸は、渡来人の家系に多い姓。 492番歌 訳文 「着物の袖に縋って泣く子よりもっとお慕いしている私を、後に残してどうなさるつもりなの」 書き出し文 「衣手に 取りとどこほり 泣く子にも まされる我れを 置きていかにせむ」舎人吉…

328.巻四・490・491:吹芡(ふふきの)刀自が歌二首

吹芡(ふふきの)刀自:以下に二首は、吹芡刀自が男の立場および女の立場になって作った歌 490番歌 訳文 「真野の浦の淀みにかかる継橋、その橋に切れ目がないように、切れ目なく私を思う気持がお心の隅にでもあるのかしら、あなたの顔が夢に見えます」 書き…

327.巻四・489:鏡王女が作る歌一首

犬養氏の本の「41 風をだに」を引用します。 「今のは(前歌の488番歌)額田王の簾動かし秋の風吹くの歌でしたね。ところがそのすぐ次に、鏡王女のつくられる歌一首として、こういう歌がある。 489番歌書き出し文「風をだに 恋ふるは羨(とも)し 風をだに …

326.巻四・488:額田王、近江の天皇を偲びて作れる歌一首

近江の天皇:天智天皇 額田王が天智天皇を思って、お作りになった歌。 引用した本です。 書き出し文 「君待つと 吾(あ)が恋ひ居(を)れば わが宿の 簾うごかし 秋の風吹く」 訳文は、犬養氏の本(40 秋の風吹く)を引用します。 ・・・前略・・・ (天智…