万葉集の日記

楽しく学んだことの忘備録

436.巻四・786~792:大伴宿禰家持、藤原朝臣久須麻呂(くずまろ)の報へ贈る歌三首、また、家持、藤原朝臣久須麻呂に贈る歌二首、藤原朝臣久須麻呂、来報(こた)ふる歌二首

報へ:歌の形でない働きかけに答えた意か。769番歌も同様か。 藤原朝臣久須麻呂:藤原仲麻呂の次男。家持の女婿になったらしい。父の謀反に連座して殺された。 786番歌 訳文 「春雨は小止みなく降り続くのに、梅がまだ咲かないのは、よほど木が若いからでし…

435.巻四・783・784・785:大伴宿禰家持、娘子に贈る歌三首

娘子:700番歌や714番歌の題詞に見える娘子と同一人物か。 783番歌 訳文 「一昨年のその前までずっと恋いつづけているのに、なぜあなたに逢えないのだろう」 書き下し文 「をととしの 先つ年より 今年まで 恋ふれどなぞも 妹に逢ひかたき」 足掛け四年恋いつ…

434.巻四・782:紀郎女、裏(つつ)める物を友に贈る歌一首 郎女、名を小鹿(をしか)といふ

裏める物:藻に包んだ贈り物。中身は水産物か。 もう一冊の本では、「いわゆる苞(つと)。748番歌注」で、袋を贈るのは、苞といい、物を包んで送るのは、心を中にこめる意。160番歌参照。 郎女:762番歌と同じ脚注であるが、この歌以下、後の増補ゆえの重複…

433.巻四・775~781:大伴宿禰家持、紀郎女に贈る歌一首、紀郎女、家持に報へ贈る歌一首、大伴宿禰家持、さらに紀郎女に贈る歌五首

775番歌 訳文 「鶉(うずら)の鳴く古びた里にいた頃から思いつづけてきたのに、どうしてあなたに逢う機会もないのであろうか」 書き下し文 「鶉鳴く 古りにし里ゆ 思へども 何ぞも妹に 逢ふよしもなき」 鶉鳴く:古るの枕詞。草深い野の荒涼たるさまを介し…

432.巻四・770~774:大伴宿禰家持、久邇の京より坂上大嬢に贈る歌五首

770番歌 訳文 「人目が多いので逢いに行けないだけなのだよ。心までもあなたを離れて忘れてしまったわけではないのだがね」 書き下し文 「人目多み 逢はなくのみぞ 心さへ 妹を忘れて 我が思はなくに」 相手の情愛が薄い、と怨む以下四首の前置きとして、自…

431.巻四・769:大伴宿禰家持、紀郎女に報(こた)へ贈る歌一首

大伴宿禰家持の歌を読む時は下の本を参考にしています。 掲載されている京都・奈良周辺地図、越中・能登周辺地図、大宰府周辺地図、大伴氏関係図などです。 769番歌 訳文 「雨の降る鬱陶しい日なのに一人きりで山近くにいると、ほんとに気が晴れず重苦しいも…

430.巻四・765~768:久邇の京に在りて、寧楽(なら)の宅に留まれる坂上大嬢を思(しの)びて、大伴宿禰家持が作る歌一首ほかに三首

久邇:475番歌参照。家持は当時内舎人(うどねり)であったので、宮仕えのため奈良を離れて久邇京にいた。 寧楽(なら)の宅:坂上の里にあった母の家であろう。 765番歌 訳文 「山一つ隔てていて行けるはずもないのに、いい月夜なのであの人は門の外に立っ…

429.巻四・762・763・764:紀郎女、大伴宿禰家持に贈る歌二首 郎女、名を小鹿(をしか)といふ 大伴宿禰家持が和ふる歌一首

平成三十年西日本豪雨(十二府県)でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたします。 また、被害にあわれた方々に心よりお見舞い申し上げます。 紀郎女:643番歌注参照、家持が最も心を許して恋の遊びをした相手で、家持より年上らしい。 762番歌 訳…

428.巻四・760・761:大伴坂上郎女、竹田の庄(たどころ)より女子(むすめ)大嬢に贈る歌二首

竹田:奈良県橿原市東竹田町、耳成山東北の地で、大伴氏の私領。宇陀郡内とする説もある。 760番歌 訳文 「見わたす限り広がった竹田の原で鳴く鶴のように、絶え間なしにいつもなのだよ。私がお前を恋しく思う気持は」 書き下し文 「うち渡す 竹田の原に 鳴…

427.巻四・756~759:大伴の田村家の大嬢、妹坂上大嬢に贈る歌四首

大伴の:759番歌の左注(後で記載します)、集中の九首は、すべて妹の坂上大嬢に贈ったもの。 756番歌 訳文 「離れた所にいて恋しがるのは苦しいものです。あなたとひっきりなしに逢えるよう、なんとか考えて下さいな」 書き下し文 「外に居て 恋ふれば苦し …

426.巻四・741~755:さらに大伴宿禰家持、坂上大嬢に贈る歌十五首(三の三:751~755番歌:第三群)

第三群:以下五首は、逢って後の恋を主題とする。 第一群の結び745番歌の「朝夕に見む時」は、第三群の伏線をなす。 751番歌 訳文 「逢ってから何日もたってはいないのに、こんなにも気違いじみて恋しく思われるとは・・・」 書き下し文 「相見ては 幾日も経…

425.巻四・741~755:さらに大伴宿禰家持、坂上大嬢に贈る歌十五首(三の二:746~750番歌:第二群)

第二群:以下五首は、第一群のような「夢の逢い」を、現実の物を機縁にして、「現(うつつ)の逢い」に転じながら展開する。 746番歌 訳文 「この世に生まれてこのかた、私はまだ見たことがない。言うに言えないくらい、こんなに見事に縫ってある袋は」 書き…

424.巻四・741~755:さらに大伴宿禰家持、坂上大嬢に贈る歌十五首(三の一:741~745番歌:第一群)

さらに:727番歌からの十四首のやりとりに対するまとめとして据えたことをしめします。470番歌、767番歌、777番歌題詞も同じ。 以下五首ずつ三群に分かれ、群ごとに共通の主題を持ち、さらに第一群と末尾が「遊仙窟」を踏まえる形で照応する、という構造を持…

423.巻四・737~740:同じき大嬢、家持に贈る歌二首 また家持、坂上大嬢に和ふる歌二首

737番歌 訳文 「とやかく人が噂を立てて私たちの間に関を置こうとしても、若狭にある後瀬の山の名のように、せめて後にお逢いしましょうね、あなた」 書き下し文 「かにかくに 人は言ふとも 若狭道の 後瀬の山の 後も逢はむ君」 後瀬の山:福井県小浜市南部…

422.巻四・735・736:同じき坂上大嬢、家持に贈る歌一首 また、家持、坂上大嬢に和ふる歌一首

735番歌 訳文 「春日山に霞がたなびき、ぼうっと月が照っている夜に、私の心もそのように晴れやらず、独り寝することになるのでしょうか」 書き下し文 「春日山 霞たなびき 心ぐく 照れる月夜(つくよ)に ひとりかも寝む」 723番歌の「ひとり寝む」を承けて…

421.巻四・729~734:大伴坂上大嬢、大伴宿禰家持に贈る歌三首、また、大伴宿禰家持が和(こた)ふる歌三首

また、:740番歌に至るやりとりで、家持の歌には「また」、大嬢の歌には「同じき」を冠しているが、これは家持の立場でまとめられていることを示します。 729番歌 訳文 「あなたが玉なら手に巻きつけてけっして離すまいものを、生身の人なので手に巻くことも…

420.巻四・727・728:大伴宿禰家持、坂上家の大嬢に贈る歌二首 離絶すること数年、また会ひ相聞往来す

離絶:なぜはなれていたか不明 また会ひ:天平九(737)年ころのことか 相聞往来:たがいに消息を通じあう意 727番歌 訳文 「忘れ草を着物の下紐にそっとつけて、忘れようとはしてみたが、とんでもないろくでなしの草だ、忘れ草とは名ばかりであったわい」 …

419.巻四・725・726:天皇に献(たてまつ)る歌二首 大伴坂上郎女、春日の里に在りて作る。

天皇:聖武天皇 春日の里:坂上郎女、の私宅のあった地。坂上と同所か。721番歌参照。 725番歌 訳文 「かいつぶりがもぐって姿を隠す池の水よ。「心」を持つお前に思いやりの心があるのなら、君をひそかにお慕い申し上げる私のせつない心をそこい映し出して…

418.巻四・723・724:大伴坂上郎女、跡見(とみ)の庄(たどころ)より、宅(いへ)に留まれる女子(むすめ)、大嬢に賜ふ歌一首 あわせて短歌

跡見(とみ):奈良県桜井市東方の地か。大伴氏私領の田地があった。坂上郎女は家刀自として田の神を祭るためにその地へ行ったか。 宅:坂上の家。 賜ふ:親(上)から子(下)に与えるという意。 723番歌 訳文 「常世の国へ私が行ってしまうわけでもないの…

417.巻四・722:大伴宿禰家持が歌一首

722番歌 訳文 「これほど恋い焦がれてなんかいずに、いっそ石や木にでもなってしまえばよかったのに。なんの物思いもせずに」 書き下し文 「かくばかり 恋ひつつあらずは 石木(いはき)にも ならましものを 物思はずして」 88番歌その他、類歌が多い。 石木…

416.巻四・721:天皇に献る歌一首 大伴坂上郎女、佐保の宅に在りて作る

天皇:聖武天皇 佐保の宅:大伴氏宗家の居宅。528番歌左注参照。郎女が坂上でなく佐保にいたのは大伴家の実質的な家刀自の立場からであろう。より私的な内容の献上歌725番歌では「春日の里」と注記のある点が注目される。 721番歌 訳文 「何しろ山住みの身の…

415.巻四・714~720:大伴宿禰家持、娘子に贈る歌七首

714番歌 訳文 「心では思いつづけているけれど、逢うきっかけのないままに、離れてばかりいて嘆いている私です」 書き下し文 「心には 思ひわたれど よしをなみ 外のみにして 嘆きぞ我がする」 691、692番歌の相手と同じ人に贈った歌であろう。次歌で坂上大…

414.巻四・711~713:丹波大女娘子(たにはのおほめをとめ)が歌三首

丹波大女娘子:伝未詳、丹波は国名で、やはり遊行女婦か。 711番歌 訳文 「鴨の鳥が浮かんでいるこの池に木の葉が散って浮くように、うきうきとうわついた気持でお慕いするのではありませんよ」 書き下し文 「鴨鳥の 遊ぶこの池に 木の葉落ちて 浮きたる心 …

413.巻四・710:安都扉(あとのとびら)娘子が歌一首

安都扉(あとのとびら)娘子:伝未詳、安都扉宿禰年足などの一族か。 710番歌 訳文 「空をわたる月の光でたった一目だけ見た人、その方のお姿が夢の中にはっきり見えました」 書き下し文 「み空行く 月の光に ただ一目 相見し人の 夢にし見ゆる」 月の縁で前…

412.巻四・709:豊前(とよのみちのくち)の国の娘子、大宅女(おほやけめ)が歌一首

犬養 孝氏の本を引用します。 47 路たづたづし(709番歌書き下し文) 「夕闇は 路たづたづし 月待ちて 行かせ吾背子(わかせこ) その間にも見む」 「この歌は、、豊前の国、今の福岡県ですね。豊前の国大宅女という人の歌なんです。 夕闇というと、月の出る…

411.巻四・707・708:粟田女娘子(あはたのめをとめ)、大伴宿禰家持に贈る歌二首

粟田女娘子:伝未詳、機智に富む歌柄は遊行女婦を思わせる。 707番歌 訳文 「胸の思いを晴らす手だてもわかないままに、片垸(かたもい)ならぬ「片思」のどん底で、私は恋する人として沈んでいます」 書き下し文 「思ひ遣る すべの知らねば 片垸(かたもい…

410.巻四・705・706:大伴宿禰家持、童女に贈る歌一首と童女が来報(こた)ふる歌一首

童女:成年を迎える以前の少女。誰ともわからないが、巻四で家持の方から歌を贈った相手は、家持自身にとって皆重要な意味を持った女性であったらしい。 705番歌 訳文 「一人前にはねかずらを、いま頭に飾っているあなたを夢に見て、いっそうせつなく心の中…

409.巻四・703・704:座部麻蘇(かむなぎべのまそ)娘子が歌二首

座部麻蘇(かむなぎべのまそ)娘子:伝不詳 703番歌 訳文 「あなたにお目にかかったその日を思うにつけ、慕わしさに涙があふれ、今日までずっと袖の乾くいとまもありません」 書き下し文 「我が背子を 相見しその日 今日までに 我が衣手は 干(ふ)る時もな…

408.巻四・701・702:河内百枝娘子、大伴宿禰家持に贈る歌二首

河内百枝娘子:伝不詳、「河内」は娘子の出身国名か。以下国や氏の名に字らしいものを続けた娘子の歌が集められているが、遊行女婦と見られる女性が多い。 701番歌 訳文 「ほんのちらっとだけあの方と目を合わせて胸をときめかしたが、どんなつでに、いつま…

407.巻四・700:大伴宿禰家持、娘子(をとめ)が門(かど)に至りて作る歌一首

700番歌 訳文 「こんなにしてまでもやって来て、やはり空しく帰ることになるのであろうか。近くもない道のりを難儀しながら参上して来て」 書き下し文 「かくしてや なほや罷(まか)らむ 近からぬ 道の間を なづみ参ゐ来て」 拒まれることを予測しながらわ…