326.巻四・488:額田王、近江の天皇を偲びて作れる歌一首
引用した本です。
書き出し文
「君待つと 吾(あ)が恋ひ居(を)れば わが宿の 簾うごかし 秋の風吹く」
訳文は、犬養氏の本(40 秋の風吹く)を引用します。
・・・前略・・・
「君待つと わが恋ひ居れば」あなたをお待ちするというわけで、私が恋ひ焦がれているというと、私のおります家の簾を動かして、なんということなく、誰が動かすともなく、秋の風が吹いて、簾がグッと動く、ああ、あの方はおいでくださるんじゃないかという歌なんです。
ずいぶんきれいな歌でしょう。
この歌は、どうも中国の六朝時代の漢詩に、やはりこうやって恋人を待つ時に、簾が動くというような漢詩があるんですね。
額田王は漢詩にも詳しいでしょうから、おそらくこういうのを詠んでいたかもしれません。
でも日本の歌になってみれば、またこれですばらしいですね。
君、女性から愛する男性にいう言葉ですよ。
天皇様をお待ちして、私が恋い焦がれていると、わが宿の簾動かし秋の風吹くというのは、恋人を待ってるでしょう、待っていると、コトと音がしても、あらと、それくらい神経を張りつめていますね。
張りつめているところへもってきて、ハッと簾が風に動く。
そうすると、もういらっりそうな気がしてくるわけでしょう。
これはなんと細かい女心を歌っているでしょうか。
ぐでぐでといわないで、わが宿の簾動かし秋の風吹く。
微妙に、緊張しきっているところで、簾がサッと動く。
その動く姿にも、ハッと心弾む作者の思い、女心の細やかさ、すばらしいですね。
それを歌っているわけです。
額田王と申しましたら、万葉の中で十二首の歌があるんですね。
異説もあるけれど、この十二首は額田王の歌だと思う。
才人ですね。
情熱も激しいし、理知もかっている。
じゃ、その女心の細かい心の揺らぎ。
風が吹いてもピリッとする。
恋人を待つ時の女の人の心持ちを、なんとうまくいってるでしょうか。
それを思いながら、もう一度うたってみましょう」
「君待つと 吾(あ)が恋ひ居(を)れば わが宿の 簾うごかし 秋の風吹く」
(引用を終わります)
参考にした本です。
次歌(489番歌)とともに、1606番歌、1607番歌に重出。
今朝は、非常に重たい8㎝ほどの積雪でした。
積もる雪の重さで春の訪れを感じます。
朝食前に雪かきしました。
道がぐじゃぐじゃになり、車も人も難儀します。
では、今日はこの辺で。
次回の記載は3月20日を予定しています。